IHI、不正発見の機会をみすみす逃した重い代償

無資格検査の内部告発が1年前にあったが…

不正の舞台となったのは、東京都西多摩郡にある瑞穂工場である。同工場は国土交通省航空局(JCAB)やアメリカ連邦航空局(FAA)など各国航空当局から認定を受けている認定工場だ。

認定工場とは、整備や検査の仕組みをJCABやFAAなどの各国当局に届け出て、その仕組みが各国当局に認められた工場のこと。届け出た手順に従っていれば、JCABやFAAの検査をしたという証明書を航空会社に付与する権限が認定工場には与えられている。

認定工場の認定期限は2年間。国交省は「定期検査」を2年に1回、それとは別に中間検査として「報告徴収」(書類監査)を同1回、行っている。さらに国交省が必要だと判断した場合、認定工場に立ち入ることを事前に知らせたうえで検査する「随時立ち入り検査」がある。

国土交通省とJCABのIHIへの今年1月の検査はこの「随時検査」だった。国交省からIHIに事前連絡があり、1月10日に今年最初の立ち入り検査を受けた。

自ら定めた規程を守らず

なぜこのタイミングでIHIに随時検査をしたかを国交省は明らかにしていないが、1月10日~2月25日の間に計3回の立ち入り検査をした。この間の2月12日に瑞穂工場は自主的に操業を全停止している。

沈痛な面持ちの満岡次郎社長(撮影:尾形文繁)

民間航空機の安全性を確保するための法律である航空法は第3章(航空機の安全性)の第20条で、「民間航空機の整備工場は業務規程を自ら定めて国土交通大臣の認可を受けなければならない。業務規程を変更しようとするときも同様」と定めている。これに違反した場合、同20条は「国土交通大臣は発覚から6カ月以内に認定工場の全部または一部の操業停止を命じ、認定を取り消すことができる」としている。

IHIは自ら定めた「有資格者が検査をする」という規程を守らず、FAA認定検査員の印鑑を借用して押印したことが、認定工場として不適切に当たる。このことからこの航空法20条に違反した疑いがある。

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