「売りまくる営業」はプロセス重視という共通点 トップ営業マンは場当たり的にならない
購買意欲のありそうなお客様の観察は重要です。どんな商品を手にしたか、何を目線で追っているのかを見ます。たとえほかのお客様の接客中であっても、観察して記憶にとめます。その時の表情、仕草、値段の確認具合など、どのような商品を望んでいるのか、見当がつくまで観察を止めません。そして、なるべくそのお客様のそばにいるようにして、声がかかるのを待つ。
さらにそのお客様の望みそうなものが特定できたら、それが店のどこにあったか、サイズはそろっていたかなど記憶を手繰り、その記憶を頼りに、声がかかったときに薦める順番まで決めておきます。薦める順番は、その顧客の望むであろうストライクゾーンのど真ん中より少し高め(高価)なものから、がセオリーです。
できる不動産屋のテクニック
実はこのセオリー、三軒家万智の働く不動産業界でよく用いられるものです。部屋を賃貸で借りたことがある人には思い当たるふしがあるかもしれません。その不動産屋は、何軒目にあなたが気に入るような物件を薦めたでしょうか。
できる不動産屋ならば、いろいろ要望を聞いたうえで、1軒目には、希望地域の希望価格帯の中から、絶対にその人が選ばないだろうなという部屋、つまり「イケてない物件」を紹介します。そして、こう言うのです。
「この地域は、物件がよく動き、出モノはほとんどない。あってもすぐ動きます」
がっかりする相手に対して、こう切り出します。
「もう1軒だけお付き合いいただけませんか」
今度は、その人の条件にかなり近い「イケている物件」に連れて行きます。
「たまたま、今この物件がキャンセルになり、空いたと連絡が入ったのです。この物件はいかがでしょうか」
こう言って決めにかかります。借りる気持ちがある人のほとんどはここで決めます。もし、ここで決まらなければ、そのお客様がこだわっているポイントに立ち返り、特徴のある物件に誘導します。窓付きの風呂がいいとか、キッチンにはIHが欲しいといった条件を確認したうえで、3軒目に案内します。
できる不動産屋ならば、もうあまりほかの選択肢はないという感じで、希少価値をちらつかせながら、2軒目とうまく比較させ、この3軒目までで決めるはずです。
不動産屋に限った話ではなく、アパレルショップなどでも同様です。多くの場合、トップ販売員は、まずストライクゾーンのど真ん中より少し高め(高価)なものを薦めてきます。