「人をダメにするベッド」が客を虜にする理由 家具ECの風雲児ベガはなぜ勝ち上がったか
家具ECでは、スマホ画面に部屋を映しながら商品を3D化し、自分の部屋で家具の配置を確認できる、AR(拡張現実)機能が大手を中心に広がりつつある。ECでは先駆者のベガだが、AR機能については静観してきた。片や競合では、リビングスタイル社のインテリア試着アプリ「RoomCo AR」がニトリや無印良品などのブランドを、ARでデータ化。島忠は専用アプリ「シマホAR」を投入している。
沈黙を破ってベガはこの2月、自社で開発したハイビジョンARをLOWYAに実装。その特徴は限りなく実物に近く、アプリがなくてもiPhoneのブラウザ「サファリ」でLOWYAのウェブを開けば、すぐにARで家具の配置確認できるという。
「これくらいリアリティーがないとダメなんじゃないかと、実物に近いクオリティーで3D配置しようとこだわった。最終的には人間に(頭で)想像をさせたくない」と浮城氏は鼻息荒い。
他社巻き込み、目指すは業界のプラットフォーム
ベガの場合、自社ECとしては、自社製品を扱う旗艦店のLOWYAのほか、大塚家具やフランスベッドなど他社の家具を販売する「Laig(ライグ)」、さらに国境を越えて通信販売を行う越境EC「DOKODEMO(ドコデモ)」の3本柱を持つ。
訪日外国人観光客(インバウンド)が2018年に約3119万人に上るなど、インバウンド需要が増す中、自社の越境ECは同業各社との連携を図れる有力な武器だろう。「訪日した旅行者が日本の商品に触れ、国に戻った後に商品を手に入れたくても、高かったり、入手できなかったりする。これは販売チャネルの問題で、機会損失が生まれてしまう。実はサーバー1つで解決できる」(浮城氏)。
政府はインバウンドを2020年に4000万人、2030年に6000万人へと拡大する戦略を掲げているが、「仮に6000万人の外国人が訪日すれば、個人消費だけで10兆~12兆円くらいになるとわれわれは試算するが、そうなると家具・インテリアとアパレルを足した業界より大きな市場ができる。そこに対する日本企業の受け皿のシステムが追いつかないのではないかと、役立つ方法を考えている」(同)。
そのとき、ベガのECに出店している他社も手軽に越境ECを活用できれば、ともに世界市場を掘り起こせる。同業を巻き込んで、業界全体のプラットフォームをもくろむ、壮大な構想といえよう。
年間1000社以上の上場企業をリサーチする分析広報研究所の小島一郎チーフアナリストは、「中国ネット通販最大手のアリババ(阿里巴巴集団)をはじめ、中国マーケットで生きのびているコマース会社は相当強い。それに対抗して選ばれる商品力やブランディング、世界観を作るのは難しいし、日本のブランドだというだけで選ばれるほど甘くはない。『LOWYAを買ってるんだ、すごい』と思われるようになったら、桁が変わって売れるのだろう」と指摘する。
ベガが越境ECで同業他社を巻き込んで世界市場をねらうとき、中国や他国の消費者をうならせる現地にない圧倒的な世界観を発信できるか。その手腕が試される。
「人をダメにするベッド」の登場から5年。ベガは中長期でLOWYA事業を1000億円にする目標を大きく掲げる。まだかなり遠い目標ではあるが、家具ECの風雲児が再び市場の起爆剤となりうるか。業界も投資家も、ベガの次の一手に注目している。
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