「人をダメにするベッド」が客を虜にする理由 家具ECの風雲児ベガはなぜ勝ち上がったか
人をダメにするベッドだけではない。猫とテレビ台という、その意外性が受けてヒットしたのが、「キャットウォークテレビ台」だ。
猫が遊べるキャットウォークと壁面テレビ台を組み合わせた。「家具業界の中で、キャットタワーとテレビ台を一緒にするなどチャレンジングなのは、ウチならでは」(浮城氏)。昨今の猫ブームも追い風に、新たな価値提案をし、顧客の潜在ニーズを引き出した。
こうした商品力の強みに加え、地味ながらも自社サイトのLOWYAで貫いている点は、徹底した商品への詳しい解説である。
商品をあらゆる角度から撮影し、解説付きの商品写真を何枚も何枚も載せる。ネジ穴の間隔を測った写真から、引き出しの中の写真など、商品の細部までとことん見せる。もちろん数値も重要であり、家具のあらゆる寸法が入った写真を載せるのは当たり前。「それまで家具業界は写真1枚で売る慣習だった。商品の下部がどうなっているかなど、細かい問い合わせが多く、自社の撮影所で撮った写真やGIFアニメで商品説明を作るなど模索した。それが好評だった」(同氏)
低価格面も訴求した。例えばソファなら平均単価が2万~3万円台。つまり、ベガが築きあげたビジネスモデルとは、低価格、サイトへの細かいこだわり、デザイン性のあるオリジナル商品の開発だ。衣料分野で「ZOZOTOWN」が未開の地を切り拓いていったように、家具ECの先駆けとしてベガは閉塞していた家具業界を駆け上がっていった。
無職で法律の勉強に明け暮れた日々
浮城氏は大学卒業後に起業を目指し、1年ごとに多様な業界を経験することを自らに課した。1つの業界を1年で辞めることを繰り返す。が、26歳になると、1年ごとに転職していたのがあだとなり、書類選考で落ち、ついには無職になったという。無職期間は独立できなかったときのために、法律の勉強に明け暮れた。「今でも実家に帰れば、当時の机に六法全書が並んでいる」(浮城氏)。法律の勉強のおかげで企業法務に強くなったというおまけもついてきた。
その後、家具の輸入商社を経て、家具業界で起業。もっとも実店舗は持たず、ECのみで販売する道を選ぶ。業界大手のニトリが全国100店体制を達成した2004年のことだ。
だが、バブル崩壊とその後のデフレ突入、住宅着工戸数の減少を受けて、国内の家具マーケットは低迷していた。経済産業省の経済センサス―活動調査(2016年)によると、家具市場はバブル期終焉期の1991年に約2兆7400億円でピークに到達。それから市場は縮小し、浮城氏が市場参入した2004年には約1兆5276億円と、ピーク時の半分近くまで落ち込む。事業所数はピーク時あった1982年の3万0198カ所から、2004年は半数以下の1万2312カ所へと激減した。冬の時代真っ盛りの中、浮城氏はECで勝負に打って出た。
「家具業界もEC化が進むと思ったのが起業のきっかけ。当時は大手もインターネットで家具を売るというのはやっていなかった。ただ当時は家具の市場が何兆円で、どこが最大手と考えたこともなく、リアルの流通がネットに変わるのを何となく察していた」と浮城氏は当時を振り返る。
もっとも最初から順風満帆だったわけではない。
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