「給料の不満」は賃金制度改革では解消できない 中小企業にリーダーが育たない根本原因

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[ステップ2]育成会議

[ステップ1]の評価点を集計し、評価者同士で結果を議論したうえで相違点を整理し評価を決定します。また、評価結果をもとに、部下の次の評価までの間にチャレンジしてもらう目標を共有します。

■ポイント
「直属の上司」「その上の上司」「コーディネーター(社長、人事役員など)」の3者(以上)ですり合わせを行う。「コーディネーター」が主導し上司二人のバラツキをそれぞれの判断理由をもとに議論したうえで統一し、評価を決定する。

 

[ステップ3]育成面談

評価結果を伝え、次の成長に向けた目標をリーダーと本人で共有します。

■ポイント
上司2人が同席したうえで、直属の上司がメインで行う。成長目標を3つ決め、3人で共有する。

 

[ステップ4]成長目標設定

「チャレンジシート」を使って、本人がステップ3で決めた目標をもとにそのレベルとプロセスを決め、記入します。直属の上司が確認し、アドバイスを行い、必要があれば修正します。

■ポイント
目標のゴールを明確に設定する。実行手順、スケジュールを具体化し、明記する。

 

[ステップ5]チャレンジ面談

[ステップ4]で決めたプロセスの進捗状況、達成度を確認し課題を共有。アドバイスを行います。

■ポイント 
直属の上司が主導し、毎月必ず実施する。

この5つのステップをPDCAとして自ら回すことができるようになれば、リーダーとして必要な部下育成・指導力を身に付けたと言えます。

人事評価制度と賃金制度の両立が不可欠

なぜなら5ステップを推進できるということは、部下の仕事ぶりをしっかり観察し、適正に評価できているからです。

『小さな会社の〈人を育てる〉賃金制度のつくり方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

また、部下のやる気を引き出す面談が行うことができて、部下のレベルに応じた成長目標を設定でき、支援しながら達成に導けるリーダーになっているということでもあるからです。

以上のように、会社の理想の人材が明確に示された経営計画を策定し、それと密接に結びついた人事評価制度を運用して賃金に反映することができれば、社員のモチベーションが上がり、組織を引っ張るリーダーも自然に育つようになります。

繰り返しますが、賃金制度だけを見直しても、失敗するだけです。賃金制度は人事評価制度の柱のひとつ、優秀な人材の流出を防ぎ会社が成長するためには、人を育てる人事評価制度と賃金制度の両方が必要です。

山元 浩二 日本人事経営研究室 代表取締役

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やまもと こうじ / Koji Yamamoto

1966年福岡県生まれ。10年間を費やし、1000社以上の人事制度を研究。理念とビジョンを実現するための人材を育成する「ビジョン実現型経営計画」を開発、独自の運用理論を確立。「経営計画」と「人事評価制度」の設計・導入から運用まで支援するスタイルが特徴で、社員の納得度が9 割を超えるなど、経営者と社員双方の満足度が高いコンサルティングを実現。著書に『小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』『小さな会社の〈人を育てる〉賃金制度のつくり方』などがある。中小企業の成長・進化のための学びの場「みらい人材アカデミー」も運営。公式サイト

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