「給料の不満」は賃金制度改革では解消できない 中小企業にリーダーが育たない根本原因
そこで私は社長に進言し、人事評価基準と賞与支給基準の設計にとりかかりました。約3カ月で完成させ、評価者となるリーダーへ研修を行ったうえで社員全員の評価をしてもらい、なんとか次の賞与支給に間に合わせることができました。
評価結果が明確に示されたので、賞与額もこれまで以上に差をつけて、社長や幹部社員としっかり確認して支給しました。これなら社員も納得するだろうと期待していましたが、結果は期待を大きく裏切るものでした。多くの社員から、抑えきれないくらいの不満が噴出したのです。その結果、社長の判断で評価制度と賞与支給基準の適用をやめることになってしまいました。
不満の原因を確かめるべく社員へのヒアリングなどを行ったところ、ほとんどの社員が自分の評価結果に納得していませんでした。また、それをもとに決まった賞与額も到底受け入れられなかったということがわかりました。
評価結果に納得できない理由を挙げてもらうと、次のようなものでした。
「甘いC課長の部署にいる人たちはみんな評価が高い」
「勤務年数が長いだけで役職者となっているような人に評価されたくない」
つまり、評価者であるリーダーが、部下を適正に評価するスキルを身につけていない状態のまま評価を決め、賞与に反映させてしまったことが原因でした。
中小企業には中間管理職が存在しない?
本来、管理職として現場を引っ張るリーダーに求められるのは、
・「部下を育成する力」
のはずです。しかし、日本の一般的な中小企業において求められているリーダー像は、実のところ次のようなものです。
・「部門で求められているスキル(営業力や現場での技術など)に秀でた人」
・「まわりとのコミュニケーションが上手な人」
・「まわりから頼りにされている人」
・「社長の親族」
つまり、自身がプレイヤーとして優秀であり、上司や部下とうまくやれる人が「いい中間管理職」なのであって、部下のマネジメントや育成を求められてこなかったわけです。本当の意味での中間管理職がいないのです。
これは決して、本人たちに非があるわけではありません。社長も周りもこの状況をよしとし、ずっとこうしたリーダーの存在を容認、いや黙認してきました。もっと正確に言うと、組織の成長のためにはリーダーの育成が課題だということは、誰しもわかってはいるが手がつけられず、結果として後まわしになっていたのです。
こんな状態の中で評価をリーダーにまかせて面談をさせ、その結果で賃金を決めても組織の混乱を招くだけです。
人事評価で従業員のモチベーションを上げるためには、リーダーの育成が必要不可欠です。どうすれば、部下を適切に評価、育成できるリーダーが育つのでしょうか。
私は本稿の冒頭近くで、「従業員100人未満の中小企業は『経営計画』と『人事評価制度』がうまく運用できていない会社がほとんど」と書きましたが、まさにこのことが、中小企業にリーダーが育たない原因だと考えています。
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