「代表取締役名誉会長」は何する人ぞ? JR東海が新設した、聞き慣れない役職の狙い

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2014年4月から代表取締役名誉会長に就く葛西敬之氏(撮影:今井康一)

「代表取締役名誉会長」という聞き慣れない役職。東海旅客鉄道(JR東海)が2014年4月の社長交代に合わせて、この役職を新設する。就任するのが、2004年から会長を務めてきた葛西敬之氏だ。

名誉会長という肩書きは時折聞かれるが、代表権を持つ名誉会長という役職は珍しい。調べてみると、約3500社の上場企業の中で取締役名誉会長がいる会社はたった17社、うち代表権を持った名誉会長がいるのは5社だけだった(表参照)。ちなみに、代表取締役名誉会長よりもさらに聞き慣れない「代表取締役相談役」という役職を設置しているのはジョイフルとヤマダ・エスバイエルホームの2社だった。

取締役会は取締役の中から代表取締役を選ばなければならない。会社法では、代表取締役について、「株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と規定している。要は会社の”顔”だ。一般的には社長や会長が代表権を持つケースが多い。

しかも、上場企業で代表権を持つ名誉会長は、大本組やカネソウ、クリエートメディックなど、創業家ないし創業者だけ。JR東海は前身が日本国有鉄道(国鉄)なので、そもそも創業者という概念は当てはまらないが、創業家ではない人物が代表取締役名誉会長になるのは、全上場企業の中でJR東海だけということになる。

代表権を付与した理由

2014年4月に名誉会長に就く葛西氏は73歳。1963年に東京大学法学部を卒業し、同年に国鉄へ入社した。

だが、著書『明日のリーダーのために』(2010年)には、入社1年目の現場実習が終わりに近づく頃、「本当にこの国鉄という職場に一生をかけて良いのか」と迷いを深め、退社を考えたというエピソードがある。結局、先輩らに説得されて留まった。その後、1967年には米ウィスコンシン大学に留学して経済学修士号を取得した。

『未完の「国鉄改革」』(2001年)によると、国鉄時代の前半の大部分は、長期経営計画や予算の部門に身を置いた。後半の職歴を決定づけたのは、1977年3月に静岡鉄道管理局の総務部長に就いたこと。ここで「人事・労務問題にかかわって以降は、労務の担当がほとんどとなった」と記している。

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