プログラミング教育を進める現場に必要な視点 「狭義」のコーディングの技術教育はいらない

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しかし、教育目的とカリキュラムを議論し尽くしたうえでのアンプラグド導入であればよいのだが、何も選べなかった結果としてのアンプラグドであれば、その教育の行く末は心配である。

アンプラグドを用いた教育は、それを実施する教員に高い素養と技能を要求するが、場当たり的に導入されたケースでそのような人物が教壇に立つことはまれだろうからだ。 現時点では、急ぎ研修などが行われている最中だが、英語の教科化や働き方改革を並行して実施しているタイミングであることを考えると、教員にかかる負担とプレッシャーは今後ますます大きくなるだろう。

今後、教員たちが自分の経験や自作の教材を持ち寄り、共有したり意見交換しなければならない場面は必ず出てくる。そこには民間企業の協力も不可欠であろう。そうしなければ、満足に授業運営をするほどの教育資源を構築することはできないし、仮に教員個々人がそれを試みた場合に、今でも厳しいと言われている教員の業務負担が許容できないほどに膨れ上がるのは確実だ。

関東圏に偏るプログラミング教室

業務負担の話題になったところで、現実のクラス運営について触れておこう。ここから使うデータは、民間企業のものが主体になる。 先進的な小学校が試行錯誤をしたり、それに追従しようとする学校がベストプラクティスを導入したりと、小学校の現場でもプログラミング教育の導入は進んでいるが、割合からするとまだ多数派であるとは言えない。

何をしたらよいか迷う小学校と、わが子に何かをしなければと焦る保護者の隙間を埋めているのは、民間企業である。プログラミング教育を謳う民間講座は大昔から存在していたが、2013年を境にその数を急速に伸ばしている。ただし、問題なのはその地理的な偏りである。

こちらの図は総務省が公表している資料だが、プログラミング教育講座の設置が都市圏、とりわけ関東圏に集中していることが読み取れる。

文科省自身も民間企業の積極的な活用、連携を謳う中で、講座数が伸びていること自体は歓迎すべきことだろう。

しかし、こうしたプログラミング教育の機会が大都市圏居住者にのみ開かれているのだとすれば、かなり皮肉な状況である。

情報技術は距離や国境を無効化すると言われているが、人生の最初期に触れる情報教育の機会が、地方在住者からは奪われているとしたら、何のための情報技術かという話になる。

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