「ドル化した世界」がFRBの利上げ路線を阻む 「日米金利差拡大による円安」も実現しない

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ドルの上昇も限られる?(写真:ロイター/Yuriko Nakao)

日米金利差の拡大も限定的に

FRBのタカ派復帰が難しい以上、日米金利差の拡大も限定される。円安予想をしている向きも、「日米金利差の拡大なきところに円安はない」というロジックが大半であることを思えば、筆者は円安予想はやはり困難と考える。控えめに言ってもドル円相場の先行きは「横ばい」か「円高」かに賭けておくのが無難というのが引き続き筆者の基本認識である。

もちろん、80円台や70円台という事態があるかどうかは別の話だ。それを実現するには近年の日本企業による円の売り切り(≒海外企業買収)はあまりにも大きいという印象がある。この点は過去の筆者コラム『日本企業の対外直接投資の流れは止まらない』を参照頂きたい。だが、そのような論点はあくまで「水準感」の議論である。「方向感」に関しては、以上で見てきたようにアメリカの国内外の経済・金融環境がアメリカの金利上昇を阻むと思われることから、日米金利差の拡大もやはり進まず、円安方向への動きは難しいと考えておきたい。

※本記事は筆者の個人的見解であり、所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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