「ゲーム=悪」と全否定する親に伝えたい視点 中毒を防ぎつつ、多様な学びにつなげる

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小宮山利恵子(こみやま りえこ)/リクルート次世代教育研究院院長、国立大学法人東京学芸大学客員准教授。1977年東京都生まれ。早稲田大学大学院修了。国会議員秘書、ベネッセなどを経て「スタディサプリ」を展開する株式会社リクルートマーケティングパートナーズにて2015年12月より現職。超党派国会議員連盟「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」有識者アドバイザー。教育新聞特任解説委員。超教育協会上席研究員。アメリカ国務省招聘プログラムInternational Visitor Leadership Program("Education in the Digital Age"、2018年)、フィンランド外務省教育省招聘プログラム(2017年)参加。全国の学校などで情報リテラシーや未来の教育について多数講演。教育関連で視察した国・都市は19カ国、41都市にのぼる(撮影:尾形文繁)

小宮山:この春、小学6年生になる息子がいるのですが、彼は今『フォートナイト』というゲームに夢中になっておりまして。「なんでそんなにゲームが好きなの?」と聞いたら、「好きなように試行錯誤できるし、失敗しても誰にも何も言われないから」って言うんですね。「自分だけ、ああ、やっちゃったって思って、また次に頑張ろうって思えるから」と。そこまで没頭させる効用はあると思います。

――よく言えば効用、悪く言えば中毒性、という親たちの声が聞こえてきそうですが(笑)。

石田:日頃多くの保護者の方から子育てや教育に関する相談を受けますが、確かに、ゲームの中毒性の問題を心配する方が非常に多いです。とくに子どもは大人と比べて、自己コントロール能力が低いので、ほったらかしでやらせっぱなしにすれば、中毒になる可能性は高まります。WHOも、ゲーム依存症を「ゲーム障害」という精神疾患として認定しましたからね。

小宮山:韓国では2011年から「ゲームシャットダウン制度」が施行されています。2002年にネットカフェでオンラインゲームを86時間続けて行い急死した24歳の男性がいたりと、日本よりもネット、ゲーム中毒は深刻な状況にあったことから、16歳未満の青少年が午前0時から6時までインターネット上のオンラインゲームの利用を制限する法律ができたのです。その効果については現在も議論がありますが、少なくとも「ゲーム中毒がある」ということは国民に周知された状況です。

日本ではそこまでの状況にはなっていませんが、日頃とても気をつけていて、息子にゲームをやらせっぱなしにはしないですね。必ずリビングの親の目が届くところでやらせていますし、時間もある程度は制限しています。

子どもが約束を守る「コツ」

石田:子どものゲーム問題についてかなり多くの相談を受ける中でわかったのは、ゲームに依存しないように管理できている家庭には共通点があるということです。多くの家庭では、子どものゲーム、スマートフォン利用にあたってルールを決めています。でも子どもがそれを守らない家庭は、ルールの決め方やその後の対応の仕方を間違っているんですね。

うまくいっている家庭は、ゲームやスマホをやらせる最初の段階で、ルール決めをしています。そのルールは親子で相談するけれども、親が一方的に通告するのでなく、最後は子ども自身に決めさせている。宿題や習い事などほかのやるべきこともあるので、ゲームの時間をどの程度に制限するべきかといったことを本人と話し合って、最終的に「じゃあ、こういうルールを決めて守ります」と本人に約束させるのです。

さらに、その内容を書いた誓約書を交わしている家庭もあります。私は、そこまではちょっと固いと思うので、ルール決めの場面を動画に撮ることをお勧めしています。言った言わないを避けるためでもありますが、自分で決めたという事実を作っておくと、子どもは約束を守る可能性が高まるからです。ただの口約束であれば、そうそう守りませんよね。大人でも同じでしょう。

小宮山:よくわかります(笑)。約束した内容を動画に記録するとなったら、子どもの意識も高まるでしょうし、ルールを破っても言い逃れできないので効果は高いでしょうね。

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