花粉飛散量と症状の強さ、実は一致しない理由 花粉症と天気予報との深い関係

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また、ウェザーニューズでは、花粉飛散量だけでなく、「今日は花粉症の症状がどの程度か」も予測しています。

実は、花粉の飛散量と症状の強さは必ずしも一致しません。例えば、西風が吹いているときは、スギの木の東の地域にはたくさんの花粉が飛んできますが、西側の地域にはあまり飛んできません。単純に考えれば、東の地域にいる人のほうが、症状が出やすくなるというわけです。

飛散量のピークが14時でも、朝につらい人が多いワケ

もちろん、風向きだけでなく、地形の影響など複雑な要素が絡み合いますが、「この地域の人の症状が出やすいのは、この気象条件のとき」という傾向があるのです。

花粉症の症状の予測を行うためには、花粉の飛散量だけでなく、そこにいる人から「症状が出たかどうか」の報告も必要です。ウェザーニュースタッチのユーザーが症状を報告し、そのデータを集約・分析することで、症状の予報も可能になっているのです。

こうして、飛散量と症状の観測データを集めることで、わかってきたことがあります。それは、1日の飛散量のピークと症状がつらい時間のピークは必ずしも一致しないということです。ピークの時間は14時ごろでも、朝に最も症状のつらさを訴える人が多いのです。これは、寝ている間に吸い込んだ花粉が、目覚めとともに強い症状を引き起こしたり、床や布団などに積もったハウスダストが、起床時に巻き上げられたりするからだと考えられています。

花粉症の症状のように、一見天気とは関係のない要素も予報につながるのは意外に感じられるかもしれません。とにかく予報にはたくさんの観測データが必要なんですね。

「気圧が変化すると体がだるい」という気象病だけでなく、花粉症も気象と密接に関係する病気。気象データというものは、本当に日常生活に役に立つものだと実感します。

今井 明子 気象予報士・サイエンスライター

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いまい あきこ / Akiko Imai

2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けにわかりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。著書に『気象の図鑑』(共著、技術評論社)、『異常気象と温暖化がわかる』(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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