なぜ日本では、このようなことが一般的なのだろうか。日本の会社では、雇用契約だけではなく、その会社の一員になるというメンバーシップ契約が存在しているのが、ポイントである。
上図の右側の「メンバーシップ契約」では、まずは会社の一員(仲間)になることが優先されるので、当初はどんな部署でどういう仕事をするかは、二の次でいいのだ。
もちろんこのメンバーシップ契約は、契約書が存在するわけではなく、明示の意思表示もないので、厳密な意味では契約とは言えないが、“暗黙のルール”として、会社と社員を規定している。身近な例でいえば、課員の歓送迎会は全員の出席が原則だったり、上司からの「ちょっと一杯」に付き合うことも、雇用契約や就業規則には書いないが、ほとんどの人が従っている。メンバーシップ契約のひとつの表れだと考えていいだろう。
社員全員に一体感を持たせる組織運営
新卒一括採用が、余剰の中高年(「働かないオジサン」)を生み出すのだとしたら、それを避けるために、欧米のように補充採用中心に変更するという考え方もあるだろう。
しかし、依然として多くの会社が、新卒一括採用を手放していない。これは、会社を運営していくのにそれなりのメリットがあるからであろう。
ややデフォルメして言えば、会社が社員全員に一体感を持った働き方を望んでいるから、新卒一括採用はなくならないのである。同じ年次の社員を横一線に並べて競争させたり、組織における縦の命令系統に同期入社の社員の横のつながりを加えた、全員参加型の組織運営を目指しているのだ。
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