「社員を解雇する権利」求める人が知らない真実 データが実証「解雇規制緩和」にメリットなし

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過当競争の下、需要の減少に抵抗するために、最低賃金で働いている人、低所得の日本人労働者が激増してきました。これは、企業が悪いわけではありません。企業は許されている制度を使っているだけですので、悪いのは最低賃金制度のありかたなのです。

雇用規制を緩和すると生産性が上がるのか

さて、今回は生産性と雇用規制について、解説していきます。

World Economic Forum(以下WEF)の「The Global Competitiveness Report, 2017-2018」という国際競争力評価の報告書の中で、「ビジネスに悪影響を及ぼしている要因は何か」を経営者に問うアンケートの結果が掲載されています。日本人経営者の回答では、「雇用規制」が第一に挙げられています。

投稿者が経営者かどうかは定かではありませんが、この連載のコメント欄でも、「日本は終身雇用だから、生産性が低い」「雇用規制を緩和しないと生産性は上がらない」「従業員のクビが切れないからダメだ」といった類の意見が寄せられることが少なくありません。マスコミ報道でも同様の趣旨の発言を耳にすることがよくあります。

日本の雇用規制に問題があると考え、先ほどのような趣旨の発言をする人の考えには、「論点1:生産性を上げるには労働市場の流動性を高めなくてはいけない」「論点2:生産性向上についてこられない人材の入れ替えを進めなくてはいけない」「論点3:生産性は経営の問題ではなく、労働者の問題だから、規制緩和や働き方改革を進めるべき」という、3つの論点が含まれているように推測します。

しかし、雇用規制を緩和すれば、日本の経済や企業の経営者にとって、本当にバラ色の将来が開けるのでしょうか。慎重な検証が必要です。

日本では、特に冷静かつ客観的な検証を行う必要があると思います。なぜなら、日本ではキチンとした検証をすることもなく、物事を感覚的に捉え、決めつけてしまう傾向が強いからです。例を挙げればいくらでも出せますが、スペースの関係もあるので1つだけ紹介しておきます。

私は、30年以上前から日本経済を分析してきました。昔は「日本は正規雇用ばかりだからダメだ」と言われ、非正規を増やし、終身雇用もなくすべきで、そうすればアメリカのように生産性が上がると言われたことも多々ありました。

そういう意見を言っていた人たちの主張通り、過去十数年、たしかに非正規雇用は非常に大きく増加しました。しかし、非正規がこんなにも増えたにもかかわらず、生産性は一向に向上していません。逆に非正規雇用者の増加が、生産性向上の妨げになるという悪影響を及ぼしているのが実態です。

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