映画「バイス」は社会派なのに笑える異色作だ 「影の大統領」チェイニー副大統領の裏側描く

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「彼がいかにして現在の世界におけるアメリカの位置づけを決定づけてきたのか。思った以上にとんでもない人物だ」と感じた彼は本作の制作を決意。そこで俳優のブラッド・ピット率いる制作会社プランBをはじめ、前作『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のチームが再集結することとなった。

ブッシュ大統領(右)の“影の大統領”として暗躍するチェイニー副大統領(左)を演じたのは、クリスチャン・ベール ©2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

そうして、“映画の主人公”に抜擢されたチェイニーだが、存在感を示したのは2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロ事件で、ブッシュ大統領を差し置いて、率先して危機管理にあたったことだろう。緊急事態における「テロとの戦い」という名の下に、盗聴や拷問もやむをえずと容認した。さらに、後に物議をかもすこととなるイラク戦争を推し進め、“影の大統領”として暗躍する。

その存在感を映画『スター・ウォーズ』に登場する悪役キャラクター、ダース・ベイダーになぞらえる人も多かったが、チェイニー自身もそのことにまんざらでもない様子だったという。ちなみに同作の原題となっている“VICE”とは、“vice president”(副大統領)に使われるような「~の代わりの」「副~」という意味のほかに、「悪徳」という意味もある。

「チェイニーを演じることができるのはクリスチャン・ベールしかいない。彼がオファーを受けなかったらこの映画は作らなかっただろう」と語るほどに、マッケイ監督はクリスチャン・ベールの出演を熱望し、彼をイメージして脚本を執筆していたという。そして『マネー・ショート 華麗なる大逆転』以来、2度目のタッグが実現する。

チャレンジを受けることにしたベールは、チェイニーの20代から70代を演じることになる本作について、メーキャップと体重の増減がこの作品の成否を決めるだろうと感じていたという。

主演のクリスチャン・ベールは約作りで20キロ増量

クリスチャン・ベールといえば、ハリウッドきっての“役者バカ”とも言うべき俳優で、役作りのために数十キロ単位で体重の増減を行うことをいとわない俳優としてもよく知られている。

一例を挙げると、2004年の『マシニスト』では1年間寝ていないという男を演じるため4カ月で30㎏の減量を敢行。にもかかわらず、その直後の『バットマン ビギンズ』では屈強な肉体を作るためにそこからおよそ45㎏の増量。そしてまた2010年の『ザ・ファイター』では13㎏減量し、頭髪を抜き、歯並びを変えた。そして2014年の『アメリカン・ハッスル』では20㎏増量する――といった具合に、クリスチャン・ベールの約作りをめぐる伝説的エピソードは数多い。

今回、チェイニーを演じるにあたり、再び20㎏の増量を行った。ただし年齢的なことや、家族の心配の声なども無視できなくなったと語るベールは、今回は初めて栄養士に相談して、健康的な方法で体重を増量させることにした。ほかにも方言や動き方のコーチをつけて、チェイニーに近づけた。

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