米国への入国に新制度「ESTA」導入、周知不十分で混乱も

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 米同時多発テロ以降、各国で出入国審査が厳しさを増す中、米国政府が1月12日から、また新たな入国制度を導入する。「電子渡航認証システム(ESTA=エスタ)」だ。

日本はこれまで、米国に短期(90日以内)滞在する場合、ビザ免除で渡航できたが、今後は事前にインターネットを通じて渡航認証を取得することが義務づけられる。

新制度は、エスタのウェブサイトにアクセスした後、氏名や生年月日、パスポート番号のほか、簡単な質問に答える仕組み。日本語にも対応している。記者も実際に試したが、画面の指示どおりに進めば特に難しいことはなく、認証を取得するまでに要した時間は約10分だった。それでも審査に時間がかかる場合もあり、米政府は渡航72時間前までに申請することを推奨している。いったん認証を受ければ、2年間またはパスポートの有効期限が切れるまで有効だ。

実はエスタは、昨年8月1日から任意での認証申請を受け付けていた。だが、知らない人は意外に多い。12月下旬に外務省に問い合わせたところ「エスタって何ですか?」と逆に聞き返される始末。関係者らは最近になって必死にアピールを始めているが、周知徹底の遅れから義務化以降に混乱を招くおそれが高まっている。

年間渡航者は350万人

日本から米国への渡航者は年間約350万人で、英国からの渡航者と並んで世界屈指の多さ。航空や旅行会社は予約時に新制度を説明し、外務省などもホームページで注意を促しているが、その効果は不透明だ。

米国大使館によると12月24日現在、日本からのエスタ申請者数は、任意期間ではあるが8万8000人程度にすぎない。それでも義務化となれば、航空各社は搭乗手続き時に渡航認証がなければ「搭乗を拒否する」という。

そもそも新制度導入の日程などが米国から正式にリリースされたのが、義務化まで2カ月を切った08年11月中旬。それから関係各社が本格的に訴求を開始し、テレビでも取り上げられ始めたが、あまりにも時間がない。

外務省幹部は「(新制度は)寝耳に水。予算がなく宣伝も限られる」とため息を漏らす。そのうえで、「米政府には混乱防止策として、空港に臨時の大使館やヘルプデスク設置のほか、携帯電話からもつなげるように要請したのだが……」と打ち明ける。

新制度は34カ国で一斉に義務化されるが、「日本ほど周知活動している国はない。他国は基本的に自己責任」(関係者)との声も。義務化まであとわずか。結果はいかに。

(冨岡 耕 =週刊東洋経済)

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