老舗鉄道雑誌「ネットで過去号読み放題」の狙い 「鉄道ファン図書館」毎月1年分、5年かけ公開
山田社長は出版元として、このような状況を解決する手段はないかと模索していたという。出版物なので復刻版の発刊がいいのだろうが、バックナンバー全号に対応するとなると費用ばかりがかかってしまい、まったく現実的でない。
そうこうしているうちに出版不況は次第に本格化していき、かつての販売部数は今や夢のまた夢となっている。まだかろうじて経営体力がある今の段階で、バックナンバーを世の中に残す施策を打たなければ、文化としての鉄道趣味誌が一部のバックナンバー保有者だけのものになってしまいかねないと危惧する事態となった。
そこで、何度も考えては躊躇して見合わせていたネットでの公開という道を選んだという。躊躇していた理由は、ネット公開の立ち上げにかかる費用や維持費、それに本業である毎月の出版業務に加えて、さらなる業務が
一方、新刊のネット販売は予想より順調だ。すでに10年以上続いている、ネット上で絶版本を公開する「交友社 鉄道図書館」も地味ながら堅調な推移を示している。
毎月1年分を公開
これらのことから「交友社 鉄道図書館」を立ち上げて運営をしてきた筆者が呼ばれ、バックナンバー公開構想が示されたのはちょうど2年前のことだった。それ以来、ほぼ毎月の打ち合わせを経て、昨年9月にグランドオープンを迎えた。
「鉄道ファン図書館」の開設を決めた際、大きな枠組みは次のとおりとなった。
2:月刊『鉄道ファン』のうち売り上げが多かった順に毎月6カ月分ずつ公開していく。
3:「交友社 鉄道図書館」は終了し、収録内容を順次「鉄道ファン図書館」に移設する。
1と2を合わせると、毎月1年分のバックナンバーを公開していくことになるため、約5年で交友社に在庫がなくなったバックナンバーをすべて収録することができる。同期間内に3の対応も終え、その後も新たな絶版本の収録を進めることを想定している。
いわば5カ年計画であり、途中立ち止まることが許されない、なかなかハードな日々が始まったのだ。
「鉄道ファン図書館」の仕様は、さまざまな検証を経て決めていった。まずは電子書籍として公開することを想定したが、読み放題サービスとする場合、1冊ずつダウンロードしてもらうことは現実的でない。そこで、収録したバックナンバーは任意のページを自由に読めるようにした。その表示は、実際の雑誌と同じく見開きで読めるようにした。
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