「カメ止め」大ヒットしても超謙虚な監督の流儀

大切なのはプライドよりも「作品の面白さ」

公私ともに、まだ区切りがつけられない。だからこそ、「素直でいることが大切だと思っています」と続ける。

上田慎一郎(うえだ しんいちろう)/1984年、滋賀県出身。映画監督。中学生の頃から自主映画を制作し、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2010年、映画製作団体PANPOKOPINA(パンポコピーナ)を結成。2017年までに8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得する。初の劇場用長編映画となった「カメラを止めるな!」(2017年)は、都内2館から全国300館以上に拡大される異例の大ヒットを記録した(撮影:梅谷秀司)

「背伸びするのではなく、(仕事仲間には)正直に『今、ちょっと悩んでいます』と伝える。僕は、創作活動も同様に自信がない部分に関しては、『どう思う?』と聞きます。映画監督らしくないかもしれませんが、めちゃくちゃアドバイスをもらう。自分が『これだ!』と思っていても、伝わらなかったら意味がないと思うんです。伝わってこそ、作った意味が生まれる」

素直な気持ちがあるからこそ、アドバイスをする側も言う気になる。

「こだわりやプライドが邪魔をして、素直になれないという気持ちもあると思います。でも僕は、プライドよりも『作品を面白くすることなら何でもやる』という気持ちのほうが強い。『上田君は、アドバイスをもらうのがうまいね』と言われることもあるのですが、僕の中では、誉め言葉だと思っています」

『カメラを止めるな!』ばかりに注目が集まるが、商業作品デビュー作『猫まんま』は観客による人気投票で1位を獲得するなど、上田作品は観客の心をつかむ強烈なパワーがある。『カメラを止めるな!』の爆発的ヒットも、元をたどれば、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で、「ゆうばりファンタランド大賞」を受賞したことから始まる。観客に支持される、すなわち観客に伝わるからこそ、上田作品は熱を帯びる。

仕事の障害を取り除く「アナウンス力」

「作品作りの際に、もう1つ留意していることがあるとすれば、撮影のためにできるだけ障壁を取り除いておくということ。事前に、アドバイスをもらうことも、撮影当日に現場でクエスチョンを減らすためです。撮影をしているときは、撮影だけに集中したい。そのためなら、前段階から率先して雑務もやります」

そのうえで、「伝えるためにはアナウンス力が大事」と、上田監督は話す。

「言葉不足のアナウンスって、とても無駄に思えてしまう。このシーンは〇〇なので、と伝えても相手が理解できなければ、結果、何度も同じことを説明することになる。質問するほうも体力を消費するわけで、障害が多ければ多いほど、行動するモチベーションが下がっていく。そうすると質が悪くなってしまう。

イベント告知にしても、〇月〇日〇時からどこどこでやります! と伝えるよりも、詳細情報がわかるようにURLまできちんと貼るなど、伝える努力が必要だと思っています。障害が多いと、それだけ人はやる気がなくなりますから」

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