アマゾン「NY本社」建設断念に追い込まれた理由 アマゾンの信念に課題を突きつけられた
アマゾンは戦い方を知っているはずだ。シアトル市が昨年、手頃な価格の住宅建設などにあてるとして年間約5000万ドルの税収を見込んだ新税導入を決定したが、アマゾンはロビー活動によってこれを撤回させた。
ニューヨークでも同じような活動ができたはずだ。ウーバーやエアビーアンドビーを手本にして、ニューヨーク在住のアマゾン・プライム会員に対し、地元選出議員に本社建設計画の推進を働きかけるよう求めることもできたかもしれない。
ただ顧客に好かれるだけではダメ?
だが実際はアマゾンは密室交渉を好み、ひそかにロビー活動を行った「彼らはこの市場がほかとは違うということを理解しなかった」とタスクは言う。「下調べをしなかった」。
アマゾンはその規模と市場優位性から、さほど痛みを伴うことなく莫大な規模の計画を撤回することができた。ニューヨーカーは、アマゾンの拠点がロングアイランド・シティになくても、トイレットペーパーやドッグフードを同社から購入し続けるだろう。
アマゾンの本社建設を支持していた住民の中には、同社の撤退は政治家の見識のなさの表れと考える人もいるかもしれない。
「これが教訓になることを願っている」と、Tech:NYCのサミュエルズは言う。「火遊びをした結果がこれだ」。
しかし、今回のことでアマゾンも学ぶことがあるはずだ。
アマゾンは長年、買い物客の要望に応え、顧客からの評判が良ければ、労働慣行や反労組的な姿勢などに対する批判をかわすことができると考え、広く成功を収めてきた。
しかし、そうした時代はもう終わりかもしれない。少なくともニューヨークでは、低価格や2日後配送では解決できない問題がある。
(執筆:Kevin Roose、翻訳:中丸碧)
(c) 2019 The New York Times News Services
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