アマゾン「NY本社」建設断念に追い込まれた理由 アマゾンの信念に課題を突きつけられた
思いがけない抵抗に遭ったアマゾンは、新聞に一面広告を出し、クイーンズの住民らに郵便広告を送付するなど支持集めのキャンペーンを行った。最終的に、戦うか逃げるかという選択を迫られ、アマゾンは後者を選んだ。
「これは重大な政治的ミスだ」と、ベンチャーキャピタリストでマイケル・ブルームバーグ前・ニューヨーク市長の選対責任者を務めたブラッドリー・タスクは言う。
地元ビジネス界からはアマゾンに同調する声
規制された市場への参入を目指すIT企業の「フィクサー」として現在活動しているタスクは、地元の反対へのアマゾンの対応は的外れだったと指摘する。「アマゾンは地元の政治をまったく理解していなかった」とタスクは言う。「クオモ州知事の言葉を、すべての人が支持すると受け取った」。
アマゾンは、バージニア州北部とテネシー州ナッシュビルでの新拠点建設計画は継続するという。ニューヨークの計画について同社は、少数の人々によって妨害されたと批判した。
「世論調査ではニューヨーカーの70%は当社の計画と投資に賛成しているが、何人かの州と市の議員がわれわれの進出に反対し、計画の推進に必要な関係構築に協力しない姿勢を明らかにした」とアマゾンは声明で述べた。
地元ビジネス界からはアマゾンに同調する声が上がった。
「ニューヨークカーたちはアマゾンに来てほしかった。クイーンズの住民らもそうだ」と、ニューヨーク市のIT業界の非営利団体「Tech:NYC」のジュリー・サミュエルズ代表は言う。「一部の政治家が妨害した」。
過去には別の2つのIT企業も、地元政府の壁に直面した。ウーバーとエアビーアンドビーだ。両社は顧客からは幅広い支持を集めていたが、政治的な抵抗に見舞われた。
ウーバーは数年前、規制当局の取り締まりに直面し、大勢のロビイストや政治コンサルタント(タスクもそのうちの1人だ)を採用して、全米各地の政府高官に働きかけを行った。同社はユーザーにも支持を求め、アプリ内にアイコンを設置して市政府への嘆願を促した。エアビーアンドビーも同様の戦術を使い、各都市のユーザーを動員した。