アメリカ株は「もう上がらない」と言い切れるか FRBの政策変更は世界経済に好影響を与える

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一方、FRBの利上げ打ち止めによって、リスク資産がリバウンドしたのは、市場心理の振幅がもたらす、一過性の動きに過ぎないとの見方がある。アメリカ以外の欧州、中国など経済指標をみると、製造業を中心に2018年末から景気減速が強まっているなど、まだケアすべき点は多いのは事実である。

筆者は、FRBの中立転換が、新興国経済の安定をもたらす経路で世界経済全体の減速に歯止めがかかる経路が重要だと考えている。2018年のFRBの利上げと米ドル高によって、対外債務を抱える新興国ほど資金流出が顕著に見られ新興国の通貨が大きく下落し、ブラジルなど一部を除き多くの中央銀行が金融引き締めを余儀なくされたことが、新興国経済全体の成長にもブレーキをかけた。

しかし、FRBの政策転換の可能性を最も早く嗅ぎ取っていた、新興国の通貨や株式市場は、昨年10月前後をボトムに一足早く上昇に転じている。通貨安定によって、インフレリスクが低下し、インドネシア、インド、南アフリカ、トルコなどの中銀は利上げの見送りの方向に政策を転換しつつある。もちろん、中国で経済停滞が続いていることが、新興国経済の大きなネックではある。だが、中国経済の減速が続いても、大きく失速する可能性は低く、各国中銀の政策転換とともに2019年に多くの新興国経済は持ち直すと見られる。

日本株の反発が今ひとつだった理由

上記の経路でFRBの政策転換は、アメリカだけではなく、新興国経済の復調をもたらし、世界経済の安定成長をもたらすとみている。これは2016年にも起きたことだが、ほぼ同様のシナリオが2019年も期待できる、ということである。1月のアメリカ株のリバウンドが早かったので、目先はやや調整する場面はあり得るだろうが、2019年央から世界経済の安定成長への期待から、アメリカ株中心にリスク資産への追い風が強まる可能性があると予想している。

2019年は多くの地域で金融政策が緩和方向に転じ、また財政政策も拡張的に作用するとみられる。一方、1月の日本株のリバウンドが、アメリカ株よりも小さかったのは10-12月決算発表で企業業績が下振れていることが影響している。さらに、(各種対策が行われるものの)秋には消費増税で再び緊縮財政が実現するため景気抑制的となっていること、そして日本銀行の金融政策が手詰まりとなっていることなどが日本株への期待が高まらない最大の理由だろう。「アメリカ株>日本株」の状況は2019年も変わらないと考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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