還元バブルで「モバイル決済」は過当競争に 「将来は半減となりかねない」これだけの理由

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このような決済サービスの乱立は続くのだろうか。問題は、決済アプリの極めて低いスイッチングコストだ。カード情報や銀行口座番号をアプリに入力するだけで済むため、お得なサービスが出れば、すぐに乗り換えられてしまう。だとすると、最初のキャンペーンだけではなく、つねに他社を上回るお得感を感じさせ続ける必要がある。この消耗戦に生き残れる運営会社はどれだけあるだろうか。

生き残りの条件は、顧客にメリットを与え続けることに加え、利用場所に近いこともカギとなるだろう。Eコマースを運営するアリババがこのパターンだ。日本でいえば、楽天ペイなどが一例だ。

あるいは、実質的なスイッチング・コストを引き上げることも一案だ。たとえば、ロイヤリティ・プログラムやポイントの運用などで、長く使うとメリットが増えるようにする。利用によってレベルが上がるLINE Payの「マイカラー」がやや近いが、これは利用額に応じたもので、必ずしも長期利用を促すものではない。

淘汰の波が訪れたらどうなるのか

淘汰の波が訪れた場合、最も気になるのが情報セキュリティ面だ。それまでに蓄積されたデータが狙われた時に、収益が上がらぬ中でコストをかけて守り切れるかどうかが懸念される。また、個人利用者、特に高齢者の場合、今のガラケー同様に、いったん使えるようになったサービスがなくなったら、新しいサービスについていけず、決済という重要な生活手段を失いかねない。

安易な集客は、最終的に顧客をリスクにさらしかねない。決済という重要な社会インフラに混乱をきたすことがないよう長期目線の戦略で臨んでほしい。

大槻 奈那 ピクテ・ジャパン シニア・フェロー

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おおつき なな / Nana Otsuki

東京大学文学部卒業。邦銀勤務の後、ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月よりマネックス証券 執行役員。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務。共著で、『S&P 日本の金融業界』シリーズ(東洋経済新報社)、『リテール金融のイノベーション』(金融財政事情研究会)、『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)など。ロンドン証券取引所 アドバイザリーグループ・メンバー。政府委員を歴任。

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