家電見本市で見たスマートハウス普及の課題 積水ハウスが国内住宅メーカーで単独初出展

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システムの構築にあたって活用するのは、この手のサービスですでに使用されているウエアラブルセンサー(身体に直接装着するもの)ではない。居住者の日常生活にストレスを与えない、住宅内に設置したセンサーにより得られる生体データを分析する。このほか、住宅内の住環境データも駆使しながら、居住者の身体的な変化の把握や疾病予防にも役立てる。

なお、システム開発では目下、NECやNTTコムウェア、コニカミノルタ、慶応義塾大学理工学部、慶応義塾大学病院、産業技術総合研究所、日立製作所とのオープンイノベーションによる実現を目指しているという。

オープンイノベーションは、今後の企業の研究開発の帰趨(きすう)を占う重要なテーマの1つだが、積水ハウスはその場が世界規模に広がるという思惑からCESに参加したという側面もある。次回以降は規模を拡大し、継続的に出展するという。

日本の住宅事業者のスマートハウス化は、まだHEMSの設置によるエネルギー制御にとどまっているのが現状だ。積水ハウスもその例外ではないが、今回発表した構想によるサービスの実現により、スマートハウスのさらなる進展と普及を狙いとしていると考えられる。

物足りなさを感じた

ところで、CESにおけるスマートハウス分野の出展には物足りなさを感じた。もちろん、世界中の大小さまざまな企業がブースを設け、アイデアなどを競い合っている様子は、躍動的で魅力的に映った。

だが、インターネットとモノがつながる、AIで認識するなどといったことは、予測可能な自然な流れに見え、意外性に乏しい。すでにある製品やサービスのバーションアップ版がほとんどで、「あったらいいよね」にとどまり、「無ければ困るよね」ではないという感じだ。

「スマートホーム」カテゴリーには最新タイプのカメラやセンサーなどが展示されていた(筆者撮影)

これはAI・IoT関連の技術者は、住宅や暮らしの専門家ではないので住まいで人々がどのような困りごとに直面しているのかを理解していないことが多いからだ。そのため、製品やサービスとユーザーニーズがしっかりと合致していないケースがみられる。

今回のCESでは、そのことが世界的にみて同じ状況なのではないか、と改めて認識できたのが実は筆者にとって最も大きな収穫だった。日本の住生活関連企業にはチャンスだと考えられるからである。生活者の動向について詳細に把握している住宅を中心とした企業のノウハウを技術と組み合わせれば、製品やサービスの開発にあたって方向性が見えやすくなり、効率性アップなどの効果も期待されるのではないだろうか。

日本の住生活関連事業者の裾野は広く、蓄積されたノウハウは厚い。少子高齢化で先細りが心配されがちな日本の住関連業界だが、AI・IoTは住まいや暮らしと最も親和性が高いはず。活路は大いに広がっているといえるのではなかろうか。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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