積水ハウス、絶好調の業績に漂う不安の正体 人事問題は幕引き、問われるガバナンスの質
制震技術でも有数の戸建て住宅トップメーカー、積水ハウスが揺れている。
3月8日に発表した2018年1月期の業績は売上高2兆1593億円(前期比6.5%増)、営業利益1955億円(同6.2%増)と、8期連続の営業増益。純利益も5期連続で過去最高を更新した。
主力の戸建て住宅事業は減収減益と冴えないが、豪州や米国など海外事業が伸び、分譲住宅事業やマンション事業の収益も拡大した。数年前から推し進めてきた事業の多角化が奏功したといえそうだ。
業績好調でも、笑顔のない会見
ただ翌日の3月9日、都内で開催した決算説明会に出席した阿部俊則会長や仲井嘉浩社長から伝わる雰囲気は、好調企業とは思えないほど、緊張感にあふれた会見だった。日頃は豪放磊落を気取り、笑顔を絶やさない阿部会長も終始うつむきぎみ。2月1日に発足した仲井新体制としては出ばなをくじかれた格好だ。
発端は1月24日に同社が発表した役員人事にある。約20年間、積水ハウスを引っ張ってきた中興の祖である和田勇元会長が2月1日付で取締役相談役に退き、4月末の株主総会後には取締役を退任すると公表。その一方で阿部社長の会長昇格、仲井常務執行役員の社長昇格などが発表された。
会社側はその理由について、「世代交代を図り、激動する市場環境に対応できる新たなガバナンス体制を構築し、事業の継続的な成長を図ってまいります」と、いわば若返りを図る交代劇の一幕と説明していた。
ところが、この一連の動きを複数のメディアが「阿部社長側のクーデター」と報道。一気に状況はきな臭くなった。当初、積水ハウス側は「(議案)可決の事実はないのだから開示する必要はない。取締役会の内容をすべて開示する義務はない」と繰り返してきた。
だが、憶測を含む虚々実々の報道合戦に辟易する形で3月6日に「当社取締役会の議事に関する報道について」というリリースを発表した。
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