積水ハウス、絶好調の業績に漂う不安の正体 人事問題は幕引き、問われるガバナンスの質

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3月9日に開催した決算説明会の席で、阿部会長は「取締役会の大改革を不退転の覚悟で行う」と宣言。代表取締役の70歳定年制導入、経営会議の設置、重要投資案件の審議徹底、責任明確化、取締役会の実効性評価などを骨子とする改革案を、すぐに着手する構えをみせた。

現在、66歳の阿部会長は少なくとも後4年で引退することを表明したといえる。

問われるのはガバナンスの質

詐欺事件についても「世間をお騒がせして申し訳ない」と詫びつつ、ガバナンス体制の構築が責務であることを強調した。仲井社長も「土地取引事故はあってはならないもの。全力で信頼回復に向けて努める」と語った。

ただ、詐欺に荷担したのであればともかく、会社が法律違反を犯したわけではない。詐欺に遭い55億円もの損失を出したとはいえ、現在の積水ハウスにとって55億円は純利益のわずか4%程度、土台を揺るがす規模ではない。

問題なのは、日本を代表する大企業である積水ハウスが、こうした人事抗争が表面化した後も説明を頑なに拒んだ、開示姿勢にある。和田前会長を退任に追い込んだ阿部会長には、ガバナンス改革が掛け声倒れにならないよう、やり抜くしか信頼回復の道はない。

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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