安倍政権を揺さぶる「毎月勤労統計」の闇 消えた給付金、脳裏によぎる「12年前の悪夢」

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その一方で、森山裕国対委員長は26日、地元・鹿児島での講演で「今回はさほど大きな問題はない」と事態の沈静化を図ったが、国会運営の責任者の発言だけに、野党側は「認識不足も甚だしい」と一斉に反発、かえって火に油を注ぐ結果となった。

首相は28日の施政方針演説で「国民にお詫びする」と謝罪するとともに、過少給付の速やかな支払いと、「統計の信頼回復に向け、徹底した検証を行う」と述べた。これに対し野党側は「首相の逃げ切りは許さない」として、根本厚労相の罷免を要求するとともに、衆参予算委での集中審議開催で2018年度補正予算案や2019年度予算案の早期成立を阻む戦略だ。

野党は「安倍政権打倒のきっかけにする」

12年前に第1次安倍政権崩壊の原因の一つとなった「消えた年金問題」が発覚したのは2007年の2月中旬のことだった。国民生活に大きな影響のある公的年金が、社会保険庁(当時)の年金記録のずさんな管理によって多数の「支給漏れ」があったことで国民の怒りが爆発、現在より一まわり若かった首相は、2007年7月の参院選で「最後の1人まで、きちんと年金を支払う」と絶叫し続けたが、自民党は歴史的惨敗を喫し、同年9月の首相退陣へとつながった。

野党側は今回の「消えた給付金問題」を12年前の勝利に重ね合わせ、「安倍政権打倒のきっかけにする」(自由党幹部)と意気盛んだ。ただ、今回の不正調査は民主党政権下で続いていたのも事実。このため、自民党は「不正を見逃していた点では、当時の民主党の厚労相らも同罪」(国対幹部)と言い返し、野党側の当時の厚労省幹部経験者も肩をすくめるばかりだ。

前半国会は2019年度予算案の成立時期が焦点だが、4月の統一地方選や4月30日と5月1日の天皇陛下退位・新天皇即位という重要な日程もあって、「野党側も予算成立を引き延ばしにくい」(自民国対)のが実態だ。安倍首相も「国民生活のためにも、まずは補正予算と本予算の早期成立が最優先」と繰り返す。

「消えた年金」だけでなく、閣僚スキャンダルなどが相次いだ12年前の通常国会でも、予算成立は年度内の3月27日だった。当時とは異なる「1強多弱」の国会だけに、「専守防衛」(官邸筋)に徹する安倍政権をどこまで追い込めるか。参院選に向け、野党陣営の力量と結束力が問われる局面でもある。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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