安倍政権を揺さぶる「毎月勤労統計」の闇 消えた給付金、脳裏によぎる「12年前の悪夢」

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政府は、昨年末に閣議決定した2019年度予算案の一部を急きょ修正して、18日に閣議決定し直すという異例の対応を強いられた。参議院の野党第1会派をめぐる内輪もめで足並みが乱れていた立憲民主、国民民主両党などの主要野党も、「全容解明なくして予算の成立なし」(立憲民主党の辻元清美・国対委員長)などと徹底追及を申し合わせた。

事態収拾のため、厚労省は22日に外部委員らによる特別監察委員会の調査報告を公表したが、元職員らに対する調査に同省最高幹部の官房長も同席していたことがわかった。さらに、監察委のヒアリング対象となった31人のうち、19人の聞き取りは厚労省の職員だけで行われたことも判明。基幹統計も含めた政府統計をチェックする過程で、ずさんな手法やあり得ない数値などの問題点が相次いで判明するなど、「統計調査の闇」(共産幹部)は深まるばかりだ。

野党側が攻撃のポイントとするのは、「不正の組織的隠蔽」と「官邸への忖度」だ。監察委の報告書などでは、厚労省幹部が「不適切な調査」と知りながら公表せずに黙認していたことが明らかになっている。監察委は「組織的隠蔽はなかった」としているが、厚労省主導での調査の不透明さなどから、野党は「組織的な隠蔽の可能性は大きい」(立憲民主)と追及の手を緩めない。

「厚労省は崖っぷち」と小泉進次郎氏

さらに、監察委の報告書で明らかになった2018年1月以降の調査結果の「補正」も、野党の大きな追及材料だ。東京での抽出調査のデータを、全数調査に近づけるため補正していたからで、それによって2018年1月以降の名目賃金上昇率は実態より高くなっていた。当時、首相は国会答弁などで、この調査結果をもとに「賃金の大幅上昇」をアピールしていただけに、野党側は「まさにアベノミクスの偽装で、厚労省の官邸への忖度」(国民民主党幹部)と口を揃える。

事態の深刻さを受け、担当閣僚の根本匠厚労相は「極めて重大な事案」として、監察委報告を受けた22日に、同省の鈴木俊彦事務次官ら計22人の減給処分と、自らの4カ月分の給与・賞与の全額返納を決めた。こうした一連の厚労省のドタバタ劇に、自民党厚労部会の小泉進次郎部会長も「厚労省は崖っぷちだ。しっかりうみを出し切って欲しい」と怒りを露わにした。

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