「大坂なおみを白くした」日清CMの超時代錯誤 責任者が知るべき「黒人たちの奮闘の歴史」

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エレン・デジェネレスのテレビ番組で「マイケル・B・ジョーダンが好き」と大坂なおみ選手が告白したマイケル・B・ジョーダン(写真:Steve Granitz/WireImage)

『ブラックパンサー』に出演するマイケル・B・ジョーダン(ちなみに大坂は彼のファンである)は、「あの映画の成功は、僕ら(黒人の)コミュニティーにとって大きな意味があった。子どもたちは、自分みたいな人がスクリーンに出てくるのを見られたんだよ。アフリカ系の子どもにとっては、自分たちの祖先がどこから来たのかということを認識するのも大事なこと。僕は、映画を通じて、それをやってみせられたんだ」と語っている。

日本ではまったく受けなかった『クレイジー・リッチ!』(2018年)がアメリカで評価された大きな理由も、それだ。この作品は、アジア系がアジア系として振る舞い、輝いていた映画。それが人種を超えて大ヒットした。「Young, Gifted and Black」ならぬ、「Young, Gifted and Asian」である。今、世の中は、そちらへ向かっているのであり、人々はそれを祝福しているのだ。

あまりにも「時代とズレている」今回のCM

今回の出来事には、もうひとつ皮肉がある。カップヌードルの消費者にはマイノリティーも多いという事実を、日清が完全に無視していることだ。このCMが日本の視聴者に向けて制作されたものであるにしても、世界規模で展開する企業にしては、あまりにズレている。

クレジットカードであれ、車であれ、通信会社であれ、今、アメリカのCMには、有名、無名にかかわらず、マイノリティーが多く登場する。そうすることで、すべての消費者に、この商品はあなた向きですよと呼びかけているのだ。もちろん、テレビに出るそれらの人たちは、肌を白くしたりなどしていない。

それが時代の流れ。なんでもアメリカが正しいと言うつもりはないし、「これは日本向けだから」と言うならば、もちろん、それはその会社の選択だ。だが、日清のような世界中の人たちを相手にする企業であれば、今、世の中がどんなところにあるのかくらいは、わかっていたほうがいいのではないかと思う。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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