「大坂なおみを白くした」日清CMの超時代錯誤 責任者が知るべき「黒人たちの奮闘の歴史」

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“ソウルの女王”のアレサ・フランクリン(写真:Ron Howard/Redferns)

これは今も名曲として受け継がれている。このメッセージの重要性は、近年、ますます認識が高まるばかりだ。それは肌の色だけでなく、体型に関しても同じ。

ハリウッド映画では、今、メリッサ・マッカーシー(彼女もまた今回のオスカーの候補者だ)、レベル・ウィルソン、エイミー・シューマーなどがどんどん主役を張り、興行成績を稼いでいる。美しさの形は1つではない。無理してその型に自分を当てはめるより、自分を受け止め、自分が自分を愛してあげることが真の美しさの始まりだ。彼女らの映画は、それを伝える。

アメリカでは絶対NGな「ホワイトウォッシング」

2015年に起こった「#OscarsSoWhite(オスカーの候補者がすべて白人だったことを示す)」批判をきっかけに、ハリウッドは多様化に向けての努力を強いられてきた。そんな中で、“ホワイトウォッシング(白人でない登場人物を白人の俳優が演じること)”は、完全なるタブーとなっている。

2015年のキャメロン・クロウの『Aloha(日本未公開)』は、ハワイアンという設定のキャラクターに、白人の中でもとりわけ肌の白いエマ・ストーンを起用したし、日本アニメの実写化『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)にはスカーレット・ヨハンソンが主演したが、あんなことはもはや許されない。すでにたくさん役がある白人がわざわざマイノリティーから役を奪うなというのもあるが、それ以前に、こんなキャスティングをすることで、「やはり主役は白人なのが普通」「白人のほうがきれいだから」という価値観の上塗りをするのが問題なのだ。

さらに、別の人種が魅力をアピールする機会が失われてしまうということもある。そこが、本当の「多様化」の目的なのだ。白人だらけだと言われないよう、とりあえず黒人やアジア人を1人入れておくというのでは、真の解決にはつながらない。「かっこいい」「あこがれる」と感じさせる形はさまざまであり、それをリアルな形で見せることこそが、求められているのである。

大坂なおみは、まさにそれをやってきた人だ。自分が得意とするものを見つけ、そのための努力を重ねて、グランドスラム優勝を果たした。彼女をお手本と尊敬する少女たちは、世界にどれほどたくさんいることだろう。その少女たちが、もし、あのCMで肌が白くなり、鼻が細くなった彼女の姿を見ていたら、どう思っただろうか。「大坂なおみですら、やっぱりああ見えたいんだ」と思ったのではないか?

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