小室圭さんが何とも気になって仕方ない理由 単に「眞子さまの婚約者だから」だけではない

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このような厳罰感情に走る人が増えた最大の原因は、やはりネットの普及。いつどこでも無料で見たいものや知りたいものにふれ、匿名で書きたいことを書き、人を傷つける言葉も使えてしまう。当初は感じていた躊躇や配慮は、続けていくうちに失われていく。しかも、同じ声を上げる人がつながって共犯関係となり、まるでオンラインゲームのように個人の転落劇をともに楽しみ、目的が達成されるまでやめることはありません。

小室さんの件で言えば、「皇室を守る」という大義名分がある分、厳罰感情はエスカレート。「皇室の品位をおとしめようとしている。ふざけるな」「詐欺師親子の化けの皮をはがせ」などという容赦ない声が目立ちます。

また、小室さんに対する厳罰感情の下敷きとして見逃せないのは、「日々のストレスをネット上にぶつけてガス抜きする」という行動パターンの定着。一連の騒動を見ていると、「“世紀の逆玉”とまで言われた小室さんをその立場から引きずり下ろすことで溜飲を下げよう」とする人の多さを感じるのです。「誰かを引きずり下ろして溜飲を下げたい」という嗜好は、勧善懲悪の連続ドラマが量産され、バラエティ番組の「痛快TVスカッとジャパン」(フジテレビ系)が人気を博していることからもわかるのではないでしょうか。

一方、“私刑”のターゲットにされた個人は、身動きが取れない状態となり、不安にかられるのみ。小室さんは22日に発表した文書を「私は、現在、米国において勉学に勤しむ機会をいただいております。多くの方々に日々感謝いたしております。ご心配をいただいている方々のご納得をいただけるよう努力を重ねる覚悟でおりますので、どうか温かく見守っていただけますと幸いでございます」という言葉で締めくくっていました。

はたして本音でしょうか? 賛否はともかく、私には追い込まれた人間特有の切なる思いに見えるのです。アメリカでの生活は、「人目を恐れ、ネットを見るのが怖く、落ち着ける場所もない。婚約に限らず、未来が見えない」という不安定な日々ではないでしょうか。まさに、進むも地獄、退くも地獄。ここまで文書の発表が遅れたのは、「もはやどちらを選んでも茨の道と感じていたから」であることは想像に難くありません。

もちろん小室さん自身にも問題はあるのでしょうが、やはり賢明なビジネスパーソンであれば、世間のムードに流され、感情に任せた個人批判は控えるのが得策。すでに追い込まれている人間を叩くことに生産性はないのです。

批判したあとフォローしたくなる人間心理

最後に1つ書いておきたいのは、厳罰感情と親近感は表裏一体であり、「メディアも人々も、小室さんをどこか身近に感じている」こと。愛憎という言葉があるように、「恋人、家族、親友などの身近に感じている人ほど、何かのきっかけで厳罰感情を抱いてしまう」というケースは少なくありません。

小室さんで言えば、グローバルな経歴や眞子さまとの婚約などで遠かった距離が、数々の報道によって一気に縮まりました。スキだらけの振る舞いや短所を見たことで、婚約が明らかになったころの清廉潔白な人物像より、いい意味での人間くささを感じるものです。

また、人々は小室さんの逆境を見続けているだけに、もし婚約が破談になったら、厳罰感情はアッと言う間に消え、「そんなに悪いやつだったか?」「どこか憎めないダメ男だったな」というフォローの声が上がりはじめるでしょう。

人間には、誰かを批判したあと、その行為を和らげ、ネガティブな感情を浄化させるようなフォローの声を発する傾向があります。事実、芸能人の不倫騒動やスポーツ界のパワハラ騒動のときがそうでした。ただ、批判やフォローに対する責任や反省の気持ちは、ほとんどありません。だから、ほとぼりが冷めると、また別のターゲットを探して攻撃してしまうのです。

今回は相手が皇室でしたが、政治家などの税金から収入を得ている公人、国民的な人気を持つアスリートや芸能人などの婚約者が好ましくないとみなされたときも、似たような現象が予想されます。「決して特別なケースではない」という意味でも、小室さんを取り巻く騒動の行く末に注目してみてはいかがでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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