「ごはんですよ!」の桃屋が100年続くワケ 徹底して良品質の商品にこだわり続けた凄み

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同社の企業理念の1つに「良品質主義」というのがある。美味しいものを作るという強いこだわりから、よい素材を選んで、ほかのメーカーでは絶対にやらないだろうというくらいの手間のかかる工程を経て製造するなど、決して妥協しない商品づくりを続けてきた。

例えば「味付榨菜」。原料の青菜頭(チンサイトウ)を収穫後、2週間風干しすることで身を凝縮させ、独特な食感を引き出す。その後、塩漬けし、乳酸発酵させ、さらに香辛料とともに瓶に詰め、約1年間発酵熟成させて製品化する。一切の手間を省かないで榨菜の伝統的な作り方を守り続けている。

見えてきた課題、次のステップへ

ただよい商品を作るというだけではなく、顧客から「桃屋の商品でなければだめだ」という言葉を得られる商品を作ることが同社の「良品質主義」の考え方だ。この考え方を実践し、守り続けてきたことが約100年間続いてきた秘訣といえる。

いくら強いこだわりをもってよい商品を作っても、最終的に顧客に手に取ってもらわなければ意味がない。いかにして桃屋ファンを増やしていくか。この点が同社の次なるステップに向けた大きな課題となった。

3代目・現社長の小出雄二氏が社長に就任した2011年は、多くのメーカーが食べるラー油市場へ参入し、粗悪品なども出始め、市場が冷え込み始めていた。その影響を受け、一時は生産が追いつかないほどの人気商品だった「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の販売も落ち着き始めた。

社内では、「既存品の売り上げは前年を割ってしまうものだから、新商品が必要だ」という考えが広まっていたという。

小出社長は、既存品に対してこのような考えでは、どれだけ商品がよくても、売れるものも売れないと思った。実際、顧客が桃屋をどのように見ているのかを確かめる必要があると考え、小出社長自ら夫人と10回ぐらいスーパーの店頭で自社の商品を販売してみた。

小出社長が衝撃的に感じたのは、「あらぁ、桃屋さん。子どもの頃よく食べたわ」と懐かしそうにされたことだ。「子どもの頃ですか?」と尋ねると、「そうねぇ。忘れていたわ」と桃屋の商品が顧客にとってすでに過去のものになってしまっていた。

また、「ごはんですよ!」以外の商品を知らないという声も多く聞かれたという。データを調べると、1割ほどの人しか桃屋の商品を継続的に使っていないということがわかった。まずは顧客に気づいてもらえるように露出を増やすこと、そして、使い方など商品の価値を伝えていくことが次なるステップに向かう重要な課題であることが浮き彫りとなった。

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