太る原因は「食べ過ぎ」に限らないという新説 食べ過ぎや運動不足より影響が大きい「遺伝」
成人後、17倍太りやすい
「子どもの頃に肥満だった人は、寿命が短い傾向にある」という研究報告があります。それほど、子ども時代の肥満は危険なのですが、関連して取り上げられるのが「肥満は、氏か育ちか」という問題です。
肥満の子にはたいてい肥満の兄弟がいます。そして、肥満の子どもは肥満の大人になり、肥満の大人は肥満の子どもを持つ傾向が高い。これは、否定しようがない事実です。子どもの頃に太っていた人が、大人になって太る確率は、そうでない人の17倍以上とされています。しかし、これが「遺伝的なもの」なのか、「生活環境によるもの」なのかは、長年謎でした。
確かに、家族は同じ環境下で暮らします。同じものを同じ頻度で同じように食べ、車を共有したりするなど、「食べる量が増え、運動量が減ったことが原因=環境説」が優位でした。しかし、近年では、「環境の影響は小さい」という研究結果が出ています。
肥満研究の権威・アルバート・J・スタンカード博士が「養子を迎え入れた家族」を対象に調査を行いました。デンマークで養子になった540人をピックアップし、それぞれ“生みの親”と“育ての親”と体重の比較を行ったのです。もし、肥満に最も影響を与えるのが環境だとすれば、養子は養父母に似るはずで、逆に遺伝的要素が最も強いのであれば、彼らは生みの親に似るはずです。
結果、養父母と養子の体重に、相関関係はまったく見られませんでした。養父母がやせていても太っていても、養子の体重に違いがなかったのです。一方、養子を生みの親と比較したところ、双方の体重にはっきりと一貫した相関関係が見られました。生みの親は育児にまったく関与していないにもかかわらず、肥満の傾向が実の子に受け継がれていたのです。太っている両親の子どもを、やせている家庭で育てたケースでも、子どもはやはり肥満になりました。