太る原因は「食べ過ぎ」に限らないという新説 食べ過ぎや運動不足より影響が大きい「遺伝」
また、「別々の環境で育てられた一卵性の双子研究」もこの結果を支持しています。一卵性の双子の遺伝物質は100%同じで、二卵性の双子の場合は25%同じ遺伝物質を持っています。
スタンカード博士が「別々に育てられた一卵性・二卵性の双子」と「一緒に育てられた一卵性・二卵性の双子」について調査したところ、別々の環境で育てられた一卵性の双子は環境の差異にかかわらず、似たような体型になったのです。そして、「肥満を決定づける要因の約70%が遺伝によるもの」という結果が導き出されました。
この結果はあなたの体重が増えやすい原因の70%は血筋によるものということを意味します。肥満は、圧倒的に遺伝の影響が大きいのです。
母親の体重増加に関連?
肥満は遺伝が7割とはいえ、過食を促したり、脂肪を蓄積させたりする「太らせる遺伝子」が存在するわけではありません。
そもそも肥満というのは、糖や脂肪を体内にため込ませる働きのある「インスリン」というホルモンが原因で起こります。なかでも、精製された炭水化物や糖、人工甘味料を摂取すると多量のインスリンが分泌され、脂肪と糖が体にたまり、BMIや胴回りが大きくなっていく、という仕組みです。
インスリンは大人の肥満だけでなく、子どもの肥満も引き起こします。では、なぜ幼児のインスリン値は高くなるのでしょうか? ハーバード・メディカルスクールのデイヴィッド・ラドウィグ教授が、51万3501人の母親とその子ども116万4750人の体重に関連性があるかどうかを調査しました。その結果、妊娠中の母親の体重の増加は、新生児の体重増加と強い関連性があることが判明したのです。
胎児は母親の血液から栄養を取り込むため、インスリン過多などのホルモンバランスの乱れが、胎盤を通じて自動的に、そして直接的に、成長途中の胎児に伝わります。そして、それが体質となって受け継がれていくのです。
この遺伝の影響は強く、従来の「カロリーを制限して運動量を増やす」というダイエット法では太刀打ちできないことが判明しています。ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院が、41校1704人の児童を対象に肥満予防の特別プログラムを行った調査を見てみましょう。
肥満と糖尿病のリスクを抱える子どもには、学校のカフェテリアで朝食と昼食を提供し、低脂質の食事についての教育を行いました。また、授業の合間に運動をする特別な時間を設けたり、体育の授業を増やしたりして学校での身体活動を活発にしました。
しかし、生徒たちの体重の変化はゼロ。運動もカロリー制限も、体重にはまったく影響がなかったのです。その後、同様の大規模調査がいくつか行われましたが、いずれも体重に変化は見られず、体脂肪率に至っては「28%から32.2%に増加した」という報告も出るほどでした。