ココイチが「糖質オフカレー」を発売する事情 白米の代わりに「カリフラワー」はありなのか

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2月末までの期間限定メニュー「手仕込豚ヒレ勝つカレー」947円。写真は半熟タマゴタルタルソース(123円)をトッピングしたもの。定番メニューとは異なる皿に盛りつけられ、プレミアム感が演出されている(筆者撮影)

また、近年ではプレミアム感のある商品展開も目立っている。その代表格が「手仕込シリーズ」だ。同チェーンの人気ナンバーワン商品「ロースカツカレー」(774円)は、同社工場で製造した冷凍カツを店舗で揚げて提供している。しかし「手仕込シリーズ」では、肉に1枚ずつ衣をつけるところから店内で行う。オペレーションの負担は増えるが、冷凍に比べ、より肉の食感と手作りならではのサクサク感を味わえる。

とんかつ、ヒレかつ、豚しゃぶをトッピングした「とこトン三昧カレー」1668円(写真:壱番屋)

この「手仕込とんかつカレー」(947円)は2004年に季節限定商品として発売。今は定番メニューとなっているほか、さらに期間限定商品もその都度発売されており、2月末までは「手仕込豚ヒレ勝つカレー」(947円)が販売中だ。とんかつ、ヒレかつ、豚しゃぶをトッピングした「とこトン三昧カレー」(1668円)も人気が高いという。

1号店以来、ハウス食品のカレーをベースに独自の味わいを加えて提供してきた同チェーン。2015年にはハウス食品の傘下に入った。浅井氏は「ライバルはご家庭のカレー」と表現するが、家庭的なカレーを、家族それぞれの好みに応じて気軽に食べられる店として独自性を発揮してきたことが、ここまでの勝因となっている。しかし近年では、1人分を手早く作れるレトルトカレーも充実してきている。むしろこちらのほうが、同チェーンのライバルと言えるだろう。

顧客のニーズに柔軟に対応できるのが強み

そうしたなか、手仕込シリーズのような、より手作り感、高級感が感じられるメニューに客の好みが移行してきているのは興味深い。メニュー数を増やすことによって、ニーズに柔軟に対応することができるのは同チェーンの強みの1つだ。

たとえば2月末までは、全店舗において動物由来の食材を使用していない「ベジタリアンカレー」を発売している。全店舗でベジタリアンカレーを導入するのは同社では初めての試みとなるそうで、客の反応を見て、市場の動向を測りたいという。

ただ一方で、1000店を超える同チェーンの規模において、客の好みに応じてメニューを増やしていくというのは、実はハードルが高い。1品増やすだけでも、食材確保面から始まり、オペレーションの変更や、在庫管理、賞味期限管理などを全店で徹底する必要があるからだ。しかしそのなかで、客の希望をできる限りかなえるという基本方針を維持していきたいという。

そのうえで、同社の独自ののれん分け制度である「ブルームシステム」は、大きな役割を果たす。まず壱番屋に入社し、安定した収入を得ながら店舗オペレーション、人材マネジメント、経営ノウハウなど最低2年学んでから独立する。1265店のうち、一部のFC店を除く1062店が、ブルームシステムによって独立したオーナーが経営する店舗だそうだ。数多くのメニューや複雑なオペレーションに対応できるのも、このシステムによってフランチャイズ店舗のサービス品質が一定に確保されているためだろう。これは、同社が長く育ててきた他社にない強みであり、将来的な市場変化に対応していくための、大きな基盤となっている。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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