小泉進次郎が描く公的年金「大改造計画」 人生100年時代の安全網をどのように築くか
村井英樹氏(以下、村井):ねんきん定期便とは、保険料を納め始めるとその人の誕生月に毎年送られてくるハガキで、保険料納付実績や将来受給できる年金見込み額などが記されている。節目年齢といわれる35歳、45歳、59歳のときは、さらに封書に入ったさまざまな資料が送られてくる。
見直し後は、図を使いながら「年金の受給開始時期は、60歳から70歳まで選択できます」「年金受給を遅らせた場合、年金額が増加します(70歳を選択した場合、65歳と比較して最大42%増)」と大きめの文字で入れている。節目年齢のときの定期便と年金請求書の送付時には、「70歳で最大42%アップ」を知らせるリーフレットも同封する。
年金請求書をそのまま返送してはダメ
――年金請求書の内容も変わります。
村井:年金請求書は、65歳時点で送られてきて、必要事項を記入して送り返すと年金の受給が始まるというもの。恐ろしいことに、これまでのものには「提出が遅れると65歳以降の年金のお支払いがいったん止まりますのでご注意ください」と書いてある。これを見たら、大抵の人は記入して送り返すだろう。
しかし、繰り下げ受給をするためには、実はこれを送り返してはいけない。結果的に、現状では繰り下げ受給を選択する人は全体の1%程度しかいない。見直し後は、「老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方の繰り下げを希望される方は、このハガキの提出は不要です」という一文を入れることにした。
――現在はまだ65歳以前から特別支給の厚生年金(報酬比例部分)をもらっている人がいるため、「ハガキを提出しないといったん止まります」という意味で、先の文言が入っています。
村井:そのとおり。だが、年金をもらえなくなると勘違いして送り返す人が絶えない。
小泉:繰り下げ受給は1%しか選択されていないと言われるが、これは情報がしっかり伝えられていないからだ。繰り下げ受給の増額を知ったらどのような変化が出るのか、4月以降、期待をもって見ていきたい。
受給開始時期の選択制について、若い世代とすでに受給している世代では受け止め方が違う。若い世代は「70歳で最大42%アップ」という話をすると、まず「本当ですか」と驚き、それとともに「だったら、70歳まで働けるようにがんばろう。聞いてよかった」とすごく前向きな受け止めが多い。一方で、高齢世代からは「早く言ってよ。それを知っていたらあと1年でもがんばったのに」と言われる。もしも繰り下げ受給の情報をきちんと届けていれば、人々の行動や人生設計は変わっていたはずだ。
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