小泉進次郎が描く公的年金「大改造計画」 人生100年時代の安全網をどのように築くか

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村井:なぜ、歳出減か、負担増かという従来型の議論になるかと言えば、少子高齢化によって支える側と支えられる側のバランスが崩れるからだった。しかし、仮に75歳まで働く社会をつくれれば、支える側が増えて支えられる側が減るため、2040年などの将来でも実は支える側と支えられる側のバランスは現在よりもよくなることがわかっている。ここをダイナミックに変えるために、何ができるか。ねんきん定期便の改訂や在職老齢年金制度の廃止、厚生年金の適用拡大などはそのためにある。

「生産年齢人口の定義についてもそろそろしっかり議論しないといけない」と田畑氏(撮影:尾形文繁)

田畑:生産年齢人口の定義についてもそろそろしっかり議論しないといけない。15歳~64歳という従来の区分けが、実社会とそうとう乖離しているのは確か。この昭和モデルでは対応できない。

――日本老年学会・日本老年医学会は2年前に高齢者の身体状況や活動能力を科学的に検証した結果、若返り現象を確認し、高齢者の定義を65歳以上から75歳以上に見直すことを提言しました。

小泉:そうだ。前提条件が変わっているのに、変わっていないという形で議論を進めてきたのが、「歳出減か? 負担増か?」という二者択一論だ。5~10歳くらいの若返りが進んでいるのだから、それを踏まえれば、今まではできなかったアプローチがむしろ当たり前になってくる。

人生100年型年金の仕掛け

日本で高齢者を含めて「あなたは何歳まで働きたいですか」とアンケートを取ると、「働ける限り働きたい」という人がいつもいちばん多い。労働を苦役と考える価値観の国とはまったく違う。働くことが前向きにとらえられる環境が絶対に必要だ。

だが、その働き方がモーレツ社員だったり「24時間働けますか」という働き方だったりしてはだめだ。一人ひとりの生き方やスキル、環境に応じた働き方が大事で、勤勉でまじめな日本人の力を最大限引き出すような社会をつくっていくことが重要。人生100年型年金ではそのような制度的仕掛けをいろいろと入れていく。

――年金に対する国民の不信感が強い状況は変わりますか。

村井:今年夏に発表される公的年金の財政検証の結果は予断を許さないものの、就業者数の増加や厚生年金の適用拡大の効果が、将来の給付水準底上げにつながるのではないかと期待している。支える側の比率を高めていき、繰り下げ受給が当たり前になれば、公的年金の給付の十分性や安定性は非常に強固なものとなる。人生100年型年金をつくることが、将来の安心を確実なものとすることにつながる。こうした考え方で年金改革に取り組んでいく。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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