ついにブーム終焉、米国エタノール産業の前途多難
というのも、07年初の一般教書演説でブッシュ大統領が、17年までにバイオエタノールを中心とする再生可能燃料の使用義務枠を、年間350億ガロンにまで拡大するとブチ上げたからだ。これは06年の生産量48億ガロンの7倍という膨大な量で、トウモロコシ原料のエタノールで賄おうとすれば、米国のトウモロコシの年間生産量がほぼすべて燃料として消えてしまう計算になる。業界に激震が走った。
その後、07年12月には「2007年エネルギー法」(09年施行)が成立し、再生可能燃料の使用義務枠を22年までに360億ガロンに拡大することを制定。トウモロコシ原料のエタノールは15年までに150億ガロンへの拡大にとどめるとしたが、それでも07年の生産量65億ガロンの2・3倍もの規模。エタノールブームは、こうした需要拡大期待を拠り所として続いてきた。
しかし、150億ガロンものエタノールを生産するためには、トウモロコシの生産量も飛躍的に増大させる必要がある。できなければ、世界的な食料危機を招きかねない。米国はトウモロコシの国際貿易量の約6割を担っているのだ。
結局、これまで業界が当てにしてきたこの法律は、今や実現性にかなりの疑問があるといわれている。360億ガロンのうち210億ガロンを、まだ実用化にも至っていない非食用作物由来(稲ワラや草など食料以外の作物を原料とする)のエタノールに依存している点からもそれは見て取れる。業界では、「ブッシュ大統領が生煮えで進めた法律」(穀物商社ユニパックグレインの茅野信行社長)との声も聞こえてくる。
トウモロコシ価格は7月以降に急落しているものの、同じようにエタノール価格も下がっており、生産マージンは改善に至っていない。もはやバイオエタノールには、「儲かる産業」と言われていた頃の見る影もない。だが、米国のバイオエタノール産業はこのまま衰退の道をたどるとも言い切れない。米国のトウモロコシ生産の3分の1をも消費するエタノール産業がなくなれば、今度はトウモロコシ価格が大暴落しかねないからだ。
行き場をなくしたエタノール業界の前途は、コーンベルトの中心、イリノイ出身のオバマ新大統領の手腕にかかっている。勢いを失った業界が存続できるように一定のテコ入れをしたうえで、現実離れしたバイオエタノールの使用義務枠を見直さざるをえないだろう。
(山田雄大 =週刊東洋経済)
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