40歳、「裏社会を本で伝える男」の非凡な人生 だからこそ僕は誰よりも友情を大事にする

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「校則を変えていくのは楽しかったんですけど、結果的に学校がすごく荒れてしまいました。自分の世代はまだしも後輩の代がひどくて、向かいの高校に火炎瓶を投げ込んだりしてました。バイクで校内を走っていた不良に

『先輩のおかげでこの学校はよくなったよ!!』

って言われて、身をもって多数決の恐ろしさを知りました。勢いでルールを変えるととんでもないことになるんだなって……」

生徒会長以外にも応援団長を務め、それなりに目立つし、面白く過ごしていた。

ただ、将来にやりたいことは特になかった。

「とにかく強制されるのが嫌でした。高校にも行きたくなかったですね」

だが、親からは

「あんたのどうしようもない性格はわかっているけど、高校だけは行ってくれ」

と頼まれ、学校からは

「生徒会長が進学しないなんて前代未聞だ」と責められた。

それでしかたなく、推薦で私立高校に進学することにした。

進学校だったので学内に不良はいなかった。中学時代の反省もあり、学校を変えようというモチベーションも上がらなかった。

「つまらない日々を過ごしていたんですけど、高校1年の2学期、国語の授業で面白い課題が出たんです」

国語の課題がきっかけで文学青年に

国語を担当する60歳くらいの女性教師は、いつもゴスロリ(ゴシック・アンド・ロリータ)のファッションを身にまとう、一風変わった人だった。

その先生が出した課題は

「芥川龍之介の小説『羅生門』の続きを書きましょう」

というものだった。

「それまでの学校で出された課題と違って、『答えがない課題だな』と思って興味が湧きました。やってみようと思いました」

かなり試行錯誤して課題に取り組んだ。文体も芥川龍之介に似せようと工夫した。

そして『羅生門』に原稿用紙5~6枚を付け加えた。内容は

『老婆の身ぐるみを剥いだ男が、結果的に自分も老婆のような姿に身をやつし羅生門の下でノミ取りをする』

というものだった。

その授業で、先生は草下さんの作品が最もできがよかったと褒めた。

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