新体制になってからは、自費出版を受注生産するビジネスをはじめた。
「『40万円であなたの本を作ります』というまずまず良心的な商売でした。1冊作って10万ほど儲かるので、1人が月に3~4冊作れば黒字になるという感じです。ただ、編集者としてはあまりやることがなくて、面白くないんです」
そんなとき、ある自費出版の依頼が来た。タイトル名は『僕、はまじ』。国民的人気作品『ちびまる子ちゃん』に登場するキャラクターはまじのモデルになった、浜崎憲孝さんが書いた自伝的作品だった。
「これは売れるって思いました。作者と社長に『一般書籍として発売しましょう』と提案してオーケーをもらいました」
さくらももこさんにかけあって、カバーイラストを描いてもらった。発売後は話題になりテレビでも取り上げられた。
「なんと7万部ほど売れました。池袋の書店に平積みになっていて、そこで立ち読みしている人を見て、感動しました」
それまでは小さな出版社が大きな出版社と同じ土俵で戦えるとは思ってもいなかった。
だが、目の前で本が売れていくのを見て、十分戦えるんだと確信した。それから彩図社では自費出版だけではなく、一般書籍を出版するようになった。
「海外のヤバイ話を取り上げた『海外ブラックロード』(嵐よういち著)『アジア「罰当たり」旅行』(丸山ゴンザレス著)など一般の出版社が手を出しづらいアンダーグラウンド、サブカルチャーの書籍を中心に出しました」
本は順調に売れた。1年で8冊制作し、4冊が5万部超えした。しかし本を出すうちに、ネタがなくなっていった。
自身のネタをまとめてエッセイ集に
「そこで僕自身が書籍を書くことにしました。地元で不良たちと遊んでいたときに得たネタをまとめてエッセイ集にしました。
昔から作家にはなりたいと思っていましたけど『ネタがないから自分で書く』なんてなりゆきで夢が実現するとは思ってもいなかったですね(笑)」
草下さんが書いた、違法ドラッグの世界を描く『実録 ドラッグ・リポート』、裏の仕事の手口を丁寧に紹介する『裏のハローワーク』はどちらもとてもよく売れた。
彩図社は、コンビニ流通の窓口をひらくなど販路を拡大していき出版社としての体が整っていった。
「現在彩図社ではさまざまなジャンルの本を出版しています。サブカルチャーの書籍の売り上げも落ちてきていますし、ひとつのテーマに集中していると危険ですからね。出している本はダイエット本やビジネス本などいろいろですが、大事なことはそれぞれの編集者が心から作りたいと思っている本を作ることです。そうでないと、なかなか面白い本は作れません」
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