あのブラックベリーが挑む「大転身」の勝算 次世代自動車の陰の主役に?米CES最新報告

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転身のきっかけとなったのは、携帯電話市場での惨敗だ。2009年に世界シェア2割(独statista調べ)を握り、一時は頂点に君臨した。だがその後、アメリカのアップルのiPhoneやグーグルのandroidOS搭載スマートフォンの勢力拡大に伴いシェアは低下、業績は急降下。2014年には58億ドル(約6300億円)の最終赤字に転落し、2016年の市場シェアはついに0%となった。

身売り話も出る絶望的な状況下で、同社を再生に導いたのは2013年からCEOを務めるジョン・チェン氏(63)だ。チェン氏は、データベース関連のソフトウェア企業SybaseのCEOを長年務めた後、2012年からプライベートエクイティ・ファンドのシルバーレイクでアドバイザ―に就任。そこでブラックベリーの再建を託され、CEOに就任した。

ブラックベリーを再建したチェン氏(1月9日のメディアラウンドテーブルで、記者撮影)

再建のためにチェン氏が行ったのは、競争力の再定義だ。ブラックベリーの携帯の特徴は、独特のデザインもさることながら、安全性の高いソフトウェアにあった。そこで目をつけたのが、2010年にアメリカのハーマンから買収し、自動車のインフォテイメントシステム(情報表示機)向けOS(基本ソフト)に加え、原子力発電所の監視装置向けなどに採用実績のあるQNX社の技術だった。これを自社技術と融合し、ブラックベリーQNXを設立。市場の拡大が見込まれる次世代自動車市場向けを軸に、安定的な収益が得られるソフトウェア企業として再出発したのだ。

次世代自動車開発で提携を積極化

足りない技術は、M&Aを繰り返して補完。2018年11月にも、AI(人工知能)による機械学習を活用したサイバーセキュリティーシステムに強いアメリカのCylanceを14億ドル(約1500億円)で買収している。次世代自動車開発のキープレイヤーとの提携にも積極的だ。自動運転の技術開発で先頭を走る企業とも次々技術提携。冒頭に挙げたイギリスのアプティブや、今回のCESで話題をさらった中国EVベンチャーのバイトン、日本ではデンソーやルネサスなどとも共同開発を進めている。

一方、競争力のなくなった携帯電話事業は、2016年に中国TCLグループなどにライセンスを供与。今回のCESでも、TCLのブースでは2018年に発売されたスマホの画面の下に、あの物理キーがついた「Key2」が大々的に展示されていた。このようにして発生するライセンス料は、全社の売上高2割超を占める重要な収入源となっている。

こうした大胆な改革の結果、2016年度に全体の約25%しかなかったソフトウェア関連売上高は、2018年度に8割を占めるまでに成長。携帯電話事業がなくなったことで売上高は激減したが、ソフトウェアビジネスは継続的に収益が得られることから採算は改善、最終損益も2018年度から黒字化している。

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