アメリカの「バブル崩壊後」に起きる「大転換」 トランプが置かれた状況は「1930年代」に似る

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にもかかわらず、最重要である、そのIMFのポストは、アングロアメリカンの契りを結んだ英国ではなく、グローバリストの中核であるフランス人が2代続けて握っている。そこに付け込んできたのが言うまでもなく中国だが、万が一、世銀トップのポストさえもアメリカから離れ、さらにBrexit(英国のEU離脱)で英国が欧州を出てしまうと、戦勝国としてプレトンウッズをリードしたケインズ氏とホワイト氏の妥協は、戦後の歴史的役割を終えることになりはしないだろうか。

いずれにしても、今市場をかけめぐるヘッドラインを仕分けすると、概ね以下の3つに大別される。

(1)米中貿易戦争と覇権の争い
 (2)グローバリスト対ナショナリストの対立
 (3)1%の金持ちから99%のその他への富の移転

トランプ大統領が今後「弱者」を取り込む可能性 

このうちAIの反応や市場の関心は(1)に集中している。だが筆者が一番恐れるのは、やはり3)である。その理由の一つが、これまで(1)と(2)の戦いに明け暮れたトランプ大統領が、民主党の攻撃によって潰される前に、自分で(3)の方向性で、民主党の政策を取り込んでしまう可能性だ。それこそが、2016年の大統領選挙をカバーした際、最後に寄稿した「2017年に『トランプ大暴落』は起きるのか」で、2期目を見据えたトランプ氏が、セオドア・ルーズベルトになってしまう可能性だ。

その前例として、トランプ大統領の「友人」の安倍晋三総理が、第2次安倍政権のスタート時には民主党がやらなかった金融緩和へ突き進んだことは大いに参考になる。本来ならリベラルの民主党がやるべきだった金融緩和を、保守を掲げる自民党の安倍政権にやられてしまった日本の野党は、その後完全に崩壊したではないか。

ならばトランプ政権が真似しない手はない。株式市場がトランプ大統領の味方にならないなら、G・Wブッシュ元大統領(子ブッシュ)のように戦争に打って出るか、あるいは本来の支持層である保守層とはまったく逆の、弱者を取り込むしかない。

だからこそ、財政拡大や金融緩和を先にトランプ大統領にやられては困る民主党は「今は財政の健全性」という正論で攻め立ててくるのである。リベラルと保守の党是の逆転。この点においてカギを握るのは、自ら「レーニン主義者」を名乗り、いまだにトランプ政権に多大な影響を持つスティーブ・バノン氏の存在だ。

対中強硬派のナショナリストして注目されがちなバノン氏だが、彼の本当の目的はどこにあるのか。バノン氏は2020年には、白人中間層を重視した2016年とは打って変わり、ヒスパニックと黒人から20%のトランプ支持を得る作戦をすでに準備しているという。次回はそこを検証してみたい。

滝澤 伯文 CME・CBOTストラテジスト

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たきざわ おさふみ / Osahumi Takizawa

アメリカ・シカゴ在住。1988年日興證券入社後、1993年日興インターナショナルシカゴ、1997年日興インターナショナルNY本社勤務。その後、1999年米国CITIグループNY本社へ転籍。傘下のソロモンスミスバーニーシカゴに転勤。CBOTの会員に復帰。2002年CITI退社後、オコーナー社、FORTIS(現在のABNアムロ)、HFT最大手Knight証券を経て現在はWEDBUSH傘下で、米国の金融市場、ならびに米国の政治動向を日系大手金融機関と大手ヘッジファンドに提供。市場商品での専門は、米国債先物・オプション 米株先物 VIXなど、シカゴの先物市場商品全般。

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