アメリカの「バブル崩壊後」に起きる「大転換」 トランプが置かれた状況は「1930年代」に似る

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これまで世銀のトップは、バラク・オバマ大統領が指名した韓国系アメリカ人のジム・ヨン・キム氏だった。ところがキム氏は任期3年を残して突然辞任を発表した。国連を筆頭に、世界的な公的機関を批判する傾向のあるトランプ政権だが、娘のイバンカ・トランプ氏のビジネスにも協力したキム氏の世銀とは、これまで比較的良好な関係だった。

しかしキム氏の辞任で、トランプ政権は後任の任命で再び世界を敵に回すことになった。これまでアメリカが支配してきた世銀トップのポストを、トランプ政権に反発する「グローバリスト系の国家」が認めない可能性が高くなっているのである。

世銀キム総裁辞任は「グローバリスト」の逆襲? 

ではアメリカの国益を無視したような、アメリカ人世銀トップの辞任の意図は何だったのか。

リベラル系メディアの解説は「トランプ政権を困らせることだ」と示唆するものが多い。ちなみにこれまでIMF(国際通貨基金)のトップ人事は欧州が握り、世銀のトップ人事はアメリカが握ってきた。

その背景には、1944年に戦後の体制を決めたプレトンウッズ(米ニューハンプシャー州)での英国代表のあの有名なJ・M・ケインズ氏と、アメリカ代表の財務次官補で日本にも縁がある、ハリー・ホワイト氏の妥協があったことは有名だ。

ただ実質アメリカの軍事力によって第2次世界大戦が終わったにもかかわらず、アメリカが英国に妥協したのは、それに先立って米英の間で大西洋憲章というアングロアメリカンの固い契りがあったこと、さらにアメリカはヨーロッパの戦後復興において、当時のウォール街がどちらかといえば世銀の役割を重視したためと言われている。

ところが、その温情が今になって仇となった。まずリチャード・ニクソン大統領時代、ドルショックによってIMFが管理する為替市場の役割が飛躍的に上がり、一方で中央銀行が生み出した流動性によって、民間銀行による世銀の役割への侵食が加速された。その結果、今ではどうみても世銀とIMFの重要性は逆転している。

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