アメリカの「バブル崩壊後」に起きる「大転換」 トランプが置かれた状況は「1930年代」に似る

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それから30年弱が経ち、外国勢の支配が強まった日本市場では、逆張り投信が生まれ、「ドットコムバブル後」と「リーマンショック」という「2度のバブル崩壊」を経験したアメリカには、平成が始まった頃の日本を彷彿させる「ユーフォリア(熱狂)の黄昏」が漂い始めている。仮にこのまま今年アメリカが崩壊すると、それは中央銀行に頼り過ぎたバブルの崩壊であろう。

あえてそれを「エブリシングバブル」と呼ぶなら、それには「野球のルール」が適用されるだろう。つまり最初のドットコムバブル崩壊でワンアウト、次のリーマンショックでツーアウト、そしてこのエブリシングバブルが崩壊すればスリーアウト。スリーアウトはチェンジだ。では、この場合のチェンジとは、前回で紹介した戦争経済へ移行することを言うのか(1937年型)、それとも別の「シー・チェンジ」(sea change)が待っているのか。ここからは、後者の可能性を触れてみたい。

今回が「バブル崩壊」なら、それは「大転換」の始まりに?

常識やルールが抜本的に変わることをシー・チェンジというが、それはリーマンショックのような外科的対応が求められる危機とは異なる。

それは恐らく、アメリカの市場関係者にさほど悲観が浸透しないまま、ゆっくりと進行する。すでにその一つの現象は現れており、その象徴がNY証券取引所の前に置かれた「Fearless Girl」のブロンズ像だ。このブロンズ像はトランプ政権発足直後、Metoo運動の盛り上がりとともに、NYのリベラル運動家たちが設置したものだ。少女が睨みつけているのは、女性軽視のウォール街の風潮だけではなく、国家ぐるみでの不正に関わるインベストメントバンキングの本質である。

直近で対象となったのは、ゴールドマンサックスや、サウジアラビアの王子や中国に深くかかわったマッキンゼー社のなどのエリートである。そしてそのFearless Girlの少女が大人になって飛び出してきたような28歳の新鋭、アレキサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員の誕生だ。

今彼女が掲げた「金持ちへの所得税大幅増税」は、アラン・グリーンスパン元FRB議長などが嘲笑する一方で、賛成する経済学者も出始めている。つまり、ここでのシー・チェンジとは、資本主義経済をけん引したアメリカが「バブル・スリーアウト」の結果、社会主義的で、儲けよりもコレクトネス(平等や公正)を重視した経済へ移行せざるを得ない状況に陥ることだ。そしてその現象は、実は1930年代とも重なっている。

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