アップルは現在、時価総額で世界最大の企業であり、”GAFA”と呼ばれる「プラットフォーマー」企業の代表格だ。しかしなぜそんな大成功を収めることができたかと言えば、「アメリカで設計し、中国で製造して、全世界で販売する」という「いいところ取り」ができたからだ。アップル社はいわばグローバリズムの申し子的存在であった。さらに言えば日本の電子部品メーカーも、部品供給という形でその恩恵に浴してきたことは言うまでもない。
しかるに昨年後半からの「米中新冷戦」の流れは、この流れを断ち切ってしまいそうだ。昨年末には、米議会で「アジア再保証イニシアティブ法」(Asia Reassurance Initiative Act of 2018)が、上院は全会一致、下院も大多数の支持を得て成立した。
これは中国の影響力拡大に対抗すべく、アメリカがインド太平洋地域への関与を強め、日本など同盟国との関係を強化し、各国の防衛力整備を支援していくことを定めたもの。具体的な項目の中には、台湾に対する武器売却も入っているから半端な内容ではない。ドナルド・トランプ大統領に対し、議会が超党派で「中国とのディールは軽々にはならぬぞよ」と釘を刺したと解するべきだろう。
米中の経済面での協力がいよいよ望み薄に
逆に中国の習近平国家主席は1月2日、台湾に向けて重要演説を行い、「祖国統一は必須であり必然だ」と、「一国二制度」の具体化に向けた政治対話を迫っている。外部勢力の干渉や台湾独立分子に対しては、「武力行使を決して放棄しない」とも語った。こんな風に言われれば、昨年11月の統一地方選挙で大敗した民進党の蔡英文総統も息を吹き返してくる。アメリカとしても、台湾支援を強めることになるだろう。2020年の次の総統選に向けて、米中が台湾への影響力を行使し合うことになるのではないか。
安全保障面で米中がかくもガチンコ対決になると、経済面での協力も望み薄になってしまう。米中は週明け1月7日から北京で通商協議を行う予定だが、3月1日の期限までに合意に達することができるだろうか。
こんな風になってしまうと、「高品質な製品を廉価に製造できる」というグローバリズムの時代が過去のものに思えてくる。アップル社のビジネスモデルは、根本から見直されることになるだろう。時価総額で世界最上位を独占していたGAFAも、その株価の一定部分はバブルだったということになるのではないか。今回の「アップルショック」は、2000年のハイテクバブル崩壊の再来なのかもしれない。
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