日本の老人ホームがドイツより庶民的な理由 彼の国の実状を見れば違いの大きさは歴然だ

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ドイツの州ごとの自己負担金を比較すると、シュトゥットガルトは、上から3つ目のバーデン=ヴュルテンベルク州の州都で、やはり、全国的に見て高いほうだ。全国平均が1830.84ユーロ。年金のほかに、かなりの蓄えがなくては、おちおち老人ホームには入れない。

老人ホーム入居の場合の月額自己負担・ドイツの州ごとの比較。地方ごとの物価・人件費の違いなどが自己負担額の差に反映される。地域によっては、自己負担が日本円で月額30万円ほどになる(出所:ドイツ民間医療保険協会)

日本の介護制度は極端に平等主義的

日本人は信じないかもしれないが、日本では、払っている税金や保険料の割には、人々が受けている福祉は悪くない。何よりも、福祉の精神がはっきりと貫かれていて、これに関しては、ほとんど社会主義の国のようだ。とくに医療は、最高のコストパフォーマンスが実現されていると言っても過言ではないと思う。

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日本の老人ホームは、「要介護3」以上なら特別養護老人ホームで受け付けてもらえ、自己負担は10万円程度で収まる。順番さえ回ってくれば、生活保護を受けている人でも入れ、ちゃんと24時間介護を受けられる。しかも、おむつ代まで施設の料金に含まれている。そして、個室でなくても、最低限のプライバシーが保たれ、できる限り快適に過ごせるようにと、いろいろな工夫もなされている。

基本方針は、「少々狭くても、なるべく安い値段で、たくさんの人を収容しましょう」ということだ。貧しい人が切り捨てられないということが、第1に考えられていると感じる。ドイツの場合と進んでいく方向が違うのは、国民性の表れなのだろうか。

川口マーン惠美 作家

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かわぐち まーん えみ / Emi Kawaguchi Mahn

ドイツ在住。日本大学芸術学部音楽学科ピアノ科卒業。シュトゥットガルト国立音楽大学院ピアノ科修了。『ドイツの脱原発がよくわかる本 日本が見習ってはいけない理由』(草思社)が第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞を受賞。『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(講談社+α新書)、『ヨーロッパから民主主義が消える』(PHP新書)など著書多数。

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