日本の老人ホームがドイツより庶民的な理由 彼の国の実状を見れば違いの大きさは歴然だ
思わず、「毎日、お掃除の人が入るのですか?」と聞くと、案内してくれた女性は少し驚いたような顔で、「もちろん」と答えた。しかし、驚いたのは私のほうだ。150室の清掃代はいかがばかりになるのだろう。それがそのまま、ホームの料金に上乗せされるのだ。
非営利でも高額な老人ホーム費用
拙著『老後の誤算 日本とドイツ』でも詳しく解説しているが、ドイツの老人ホームは、どれもこれも料金が高い。民間の老人ホームは、当然、需要に応じてピンからキリまであるので、ここでは触れないが、そのほか、公立のものと、ここのように社会福祉法人のものがある。社会福祉法人は儲けを出してはいけないので、このホームでも、残業手当などで毎月、収支を調整しているということだったが、それにしても、シュトゥットガルトは、ドイツでは家賃や人件費のとりわけ高い土地だ。老人ホームを経営すれば、利益を出さなくても経費はかさむ。しかも、ここまでぜいたくになると料金も相当なものだろう。
老人ホームの費用の内訳は、ざっくり言うと3つだ。
②部屋と食事代
③その他の運営費やら修繕費
上記に加えて、介護アシスタントの養成のためにかかる費用を、入居者に負担してもらっているホームも多い。
②の食と住はどこにいてもかかるものなので、本来なら、介護保険の支払い対象にはならない。理屈として、介護保険が支払うものは①の介護費だけであるが、もちろん、余っていれば ②や③に回すことは構わない。
あるドイツの民間介護サービス会社の試算による、「要介護度3」の人が老人ホームに入ったときの例を挙げよう。
②の部屋代と食事代が、それぞれ425.27ユーロと152.10ユーロ
③のホームの補修費の積み立てなどが545.73ユーロ
合計の金額が2780.08ユーロとなる。そのうち介護保険が1262ユーロを補填するので、差額が1518.08ユーロ。これが自己負担金だ。
なお、私の見せてもらった非営利団体のホームでは、「要介護度1」の人の自己負担金は毎月2742.38ユーロ(約35万7000円)で、「要介護度2」から「要介護度5」の人は均一2462ユーロ(約32万円)だった。つまり、キリスト教関係の施設だからといっても、必ずしも貧しい人を対象にした経営をしているわけではないということだ。
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