「反中ワシントンコンセンサス」が猛威振るう アメリカの「中国封じ込め」、日本はどうする?

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中国とのサプライチェーンの寸断が狙い?(写真:REUTERS/James Lawler Dugga)

ウォール・ストリート・ジャーナルのグレッグ・イップ経済担当チーフコメンテーターは、対中強硬派の関税やその他罰則の狙いは、最終的に中国とのサプライチェーンを寸断することだという。スティーブ・バノン元首席戦略官・上級顧問も、トランプ政権の狙いは発足時から米企業の対中投資をアメリカ国内に引き戻し、世界のサプライチェーンを作り変えることだと語っている。

つまり、トランプ政権はアメリカを中心とした経済圏、そして中国を中心とした経済圏に世界経済を分断する「デカップリング」を目指しているようだ。 今日、同政権は中国で活動する米企業にこの方針をすでに伝達し始めているという。トランプ政権の進める「封じ込め政策」は、戦後、長く見られたグローバル化に逆行する動きだ。サプライチェーンが複雑となっている今日、同政策で成果を上げるには相当な労力と時間が必要だ。

日本の産業への深刻な影響も懸念される

第2次世界大戦後、今日、米中間で繰り広げられているような類いの覇権争いは見られなかった。戦後の米ソ冷戦は「資本主義vs.共産主義」と「自由主義vs.社会主義」という政治経済体制の対立であったが、米ソ両国の貿易関係は希薄であったことから大規模な貿易摩擦には発展しなかった。一方、1980年代の日米貿易摩擦は同盟国間であったことから安全保障面や政治経済体制での対立は起きなかった。

だが、現在の米中覇権争いは、安保・政治経済体制の対立と貿易摩擦の両面を兼ね備えた、戦後、世界が経験していない覇権争いだ。ファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)など中国の通信機器メーカーは安全保障上の懸念から、アメリカ以外にもアングロサクソン系諜報機関「ファイブアイズ」の一部や日本などアメリカの同盟国が、政府調達で両社などを排除する動きが拡大している。

今後も日本は密接な日中経済関係よりも、アメリカと連携して安全保障を優先することを選択することになるか注目だ。今後、ファーウェイの孟晩舟最高財務責任者(CFO)逮捕も影響し、アメリカの輸出規制強化につながり、中国への技術流出を懸念してハイテク製品の輸出が困難となった場合など、日本企業にも影響を及ぼすことが予想される。

今や日本にとって貿易総額トップである中国と既存のサプライチェーンを切り離す「デカップリング」は容易ではない。アメリカの輸出規制が強化された後、それを日本企業が仮に違反した場合などその企業に制裁が課されるリスクが生じる。制裁内容は罰金やアメリカの金融機関との取引禁止などがありえよう。

米ソ冷戦時代の1987年に起きた東芝機械ココム違反事件では、議会やアメリカ国民による激しい東芝たたきが見られた。当時、反日感情が高まっていたアメリカ社会は、現在は反中感情にシフトし状況は異なる。だが、米中ハイテク冷戦に突入する中、中国との経済的関係が深い日本企業は今後、アメリカのハイテク輸出の規制強化の動きに細心の注意が必要だろう。

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