52歳ジャンプ漫画家が「芸人」に挑戦した理由

「ろくでなしBLUES」作者がなぜM-1に出場?

――『M-1』で披露されていたのは、森田先生がほかの漫画家に嫉妬するという設定のネタでしたが、これはお二人で考えたものなんでしょうか?

長田:一応、僕が最初に考えた案がベースになってますけど、今となっては原型はほとんどなくなっていますね。森田先生は『週刊少年ジャンプ』のレジェンドなんですけど、ほかの『ジャンプ』作家に比べると扱いが悪いんじゃないかと常々言っていまして。「もっとチヤホヤされたい」ってずっと言っていたんですよ。

「準々決勝での敗退」はちょうどよかった

――森田先生はどういうときに「チヤホヤが足りない」と感じたんですか?

森田:僕は同期というか同い年で井上雄彦さんと冨樫義博さんっていうスーパーレジェンドがいるので、その人たちに比べて、っていうのが一番大きいですけどね。あの人たちの過去の作品は今でも書店で売ってますけど、僕のはだいたい置いてないですからね。

森田まさのり(もりた・まさのり)/漫画家。1966年12月22日生まれ。滋賀県出身。実家は浄土真宗本願寺派の寺院。高校在学中に手塚賞佳作を受賞し漫画家デビューを果たす。1988年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)において『ろくでなしBLUES』で初の連載を開始。以降、『ROOKIES』『べしゃり暮らし』などのヒット作を生みだす。作品の映像化も多い。

あとは『ジャンプ』が50周年のときに「50周年記念号」っていうのが出たんですね。そこに歴代代表作の一覧っていうのが載っていたんですけど、そこに『ROOKIES』は書いてなかったんですよ。

――そうなんですか!

森田:「えーっ!?」って思って。『ROOKIES』ってだいたい5年半やってるんですよ。それで2000万部売り上げたから、そこそこ代表作じゃないのかって思うんですけど、載ってなかったんです。30週で終わった『CYBORGじいちゃんG』は載ってるのに(笑)。

長田:そういうのは言わないでください!(笑)

――お客さんの反応を見る限りでは、個々の漫画に関する話題もきちんと伝わってウケている感じでしたね。

森田:そうですね、やっぱり井上雄彦と冨樫義博はみんな知っているんですね。『HUNTER×HUNTER』が休載しまくるっていうのは、もう普通に常識として知っているみたいで、それがまた悔しい(笑)。

長田:読んでない人でも知ってますからね。

――お二人は準々決勝で敗退したわけですが、この結果をどう受け止めていますか?

長田:もう出来すぎだと思いますね。

森田:予想以上だね。最初は1回戦を通るかどうか、ぐらいでしたから。話題性で通してもらっている部分もあるっていうのは当然わかっていますけれども、予選会場でウケていたっていうのも事実ですからね。

長田:そうですね、3回戦以降のアウェーの状況でもウケていたので、「あ、ちゃんとネタが面白いんだ」っていうのはそこで感じました。

長田悠幸(おさだ・ゆうこう)/漫画家。1975年12月7日生まれ。静岡県出身。1996年より『週刊ヤングマガジン』(講談社)においてちばてつや賞大賞受賞作『GLOCK』でデビュー。代表作に『SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん』(現在連載中)、『キッドアイラック!』などがある。

森田:ちょうどいいところで終われたよね。準決勝はたぶん行っちゃダメだったんです。B&Bの島田洋七さんとお食事をさせてもらったことがあって、それから何回かやり取りをさせてもらっているんですけど、1回戦、2回戦のときに「突破しました」って連絡したら喜んでもらえて。それで準々決勝で「ダメでした」っていうメールをしたら「おめでとう」って返ってきたんです。「落ちて良かった。せやないと、漫才がかわいそうやもん」って。

長田:いや、これ、しびれますね。準々決勝で落ちたときに森田先生とその話になって、「僕もまったく同じように思っていました」と答えたんです。芸に命を懸けている人たちの聖域にあれ以上は踏み込むべきじゃない、って。僕らはもうすでに漫画に魂を売っているので、お笑いにはどうしても魂を売り切れていないと思うんですよ。

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