52歳ジャンプ漫画家が「芸人」に挑戦した理由 「ろくでなしBLUES」作者がなぜM-1に出場?

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長田:本当に不思議な関係性なんですよね。だってもともとは大尊敬する大先輩でしたから、お会いできただけでも夢みたいだったんですよ。それが『M-1』にまで出ることになるとは思いませんでしたから。その関係性になれただけで満足ですし、あとは全力でミスらないようにサポートしていこうっていうのをずっと心がけていましたね。

――森田先生は本当にヒット作も多くて大先生みたいなイメージがあるんですけど、ご本人の中では後輩の方に対してもライバル心のようなものがまだあるんですね。

森田:ありますよ。絵にしてもものすごく下手だっていう意識があるし、描くのは遅いし、線に迷いがあるから。描くのが遅い人って下手なんですよ。長田くんとか描くの速いでしょ。僕はまだペンに慣れてないというかね。

長田:なんでまだ慣れてないんですか!(笑)

森田:しかも、昔はもっと速く描けたのに、最近はゆっくりとしか描けなくなっちゃって。だから絵もそんなにうまくないし、人生経験がほかの作家さんよりも少ないっていうのがあるし、遊んでないし、人付き合い少ないし。そのへんが悔しい部分ではありますよね。ただ、笑いのセンスみたいなところでは負けたくないんです。漫画家の中で一番面白いって思われたい。漫画はもちろん、普段しゃべることでもとにかく笑わせたいし。

「面白い」が一番欲しい

――プロの芸人さんではないですけど、芸人さんっぽいところはもともとあるんですね。

森田:元からありますね。僕も芸人さんにはなりたかったんですよ。あがり症なのでできなかったんですけど。

――森田先生は現在、この芸人としての体験を踏まえて『べしゃり暮らし』の続編を描いているそうですね。

森田:そうですね、自信持って描いてますね。今描いているのが、『M-1』みたいな『NMC(ニッポン漫才クラシック)』っていう大会の決勝戦なんです。ちょうどこの間、『M-1』の決勝戦(2018年12月2日開催)があったじゃないですか。あれも現場に見に行ってまして、その空気感とかも踏まえつつ描いてますね。

漫才中にいつも披露している「漫画家」の定番ポーズ(撮影:梅谷秀司)

――お二人とも漫画家としてこれまでキャリアを積んできたうえで、今回は漫才という「まったく新しい分野」に挑んでこられたわけですが、それをやろうと思えたのはどうしてなんでしょうか。

森田:最初は「別に失うものは何もない」と思っていたんですけど、よく考えたら失うものだらけでした(笑)。スベってしまったら、「あ、『べしゃり暮らし』ってこんなやつが描いてるのか」ってなりますからね。でも、僕はもともと芸人になりたかったので。

長田:そうですよね。で、やっていたらやっぱり面白かったですよね。

森田:うん、面白かった。

長田:ネタ合わせも面白かったし、その後で自分たちの動画を見直しているのもすごい面白かった。だから、あまり不安を感じてなかったです。

森田:僕がどんな人間になりたいかっていうと、「かっこいい」は要らない、「頭いい」も要らない、「スポーツできる」も要らない。「面白い」、これが欲しい。絶対これが一番欲しいんです。どう思われたいかって、面白いと思われたいですね。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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