突破口となったのは、やはり言葉のプロである山本兼一先生でした。山本先生と監督が手紙を書いてくださって。それをお渡ししましたところ、海老蔵さんの心が少し動いたのです。「この映画で描きたいのは利休の情熱である。ぶしつけながら、これまでも利休を描いた、いろいろなすばらしい作品もあったが、そこは描かれていなかったはずだ。なぜこれを描かなかったのか、不思議でならない。そしてそんな利休を演じられるのはあなたしかいない」といった内容のお手紙でした。
文面は僕の説明よりも、もっとうまい言葉だったと記憶していますが、とにかくすごく熱い手紙でした。そこからお話を聞いてくださるようになって。2012年の年明けぐらいに、海老蔵さんがこの映画をやろうと決めてくださった。人づてに聞いた話によると、海老蔵さんがこの映画に出ると決めた後は、海老蔵さん自身が松竹にお願いしてくださったと聞きました。そういうことはあまり恩着せがましく言わない人なので、俺が出ると決めたのだからということだと思うのですが、本当に感謝しています。
海老蔵さんのお点前が見どころ!
――利休を演じるにあたり、海老蔵さんはお茶の稽古に熱心に励まれたそうですが。
お点前というと、型を覚えて、見た目の美しさを見せるということを言うのだと思うのですが、海老蔵さんはそのレベルではない。型を覚えるのはもちろん当たり前で、型を覚え尽くしたうえで、それ以上の心情を見せているのです。ラストシーンで海老蔵さんがお茶をさし出すときに、手元だけが映るカットがあるのですが、お点前の型が表情になっているのです。そこは見どころですね。
――本作には、今年2月に亡くなられた、海老蔵さんの父上、12代目・市川團十郎さんも出演しています。
利休の師匠・武野紹鷗という役で出ていただきました。若い頃の利休の才能を泳がせて、見守るという大きな役柄です。これはもう海老蔵さんの師匠、市川團十郎さんしかいないということでオファーをしましたところ、快諾してくださって。ビックリしましたね。東映作品で團十郎さんに出演していただいて、しかも親子共演だという。これは本当にすごいことだなと……。これはご縁だなと思いました。誰かを説得してどうこうなる話ではないですから。
――もともと宣伝部出身だった森田さんが、プロデューサーとして本作を映画化したいと思ったのはどういう経緯だったのでしょうか?
最初のきっかけは、関西支社全体の方針として、作り手と売り手の垣根を超えて一緒にやっていこうというのがありました。会社全体としても弊社社長の岡田が、「ここで働く者はみんな誰でも映画を企画していいんだ」といったことを言っていたのです。その具体的な真意はわからないですし、もしかしたら精神論だったのかもしれないのです。しかし、場の空気を読めない僕は、それを真に受けて行動に移してしまった。しかも職場の先輩方もすごく映画好きで熱い人たちなので、なぜか僕は営業なのに、みんながやれやれと言ってくれたことも支えになりました。
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