「待機児童」が地方より東京に集まる根本原因 データで読み解く「女性の社会進出」の歴史

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ここまでの事実をまとめると、

東京都
・戦前は20%だった就業率が、戦後は60%前後まで上がっている
・M字カーブが大きい 

山形県
・戦前から戦後にかけて一貫して就業率が高い
・M字カーブがない

という特徴が浮かびあがってきます。東京都の特徴は、いわゆる高度経済成長期の専業主婦型社会の特徴であり、それが山形県には普及しなかったことがわかります。つまり専業主婦型社会は都市限定の現象で、地方では農業をしていた女性がそのまま第二次産業などにスライドしたため、都市部で始まった専業主婦型社会は地方に到達していなかったのです。

それを端的に表しているのが、昨今なにかと話題の待機児童数でしょう。

[図表13]2017年の待機児童数(出典:厚生労働省:保育所等関連状況取りまとめをもとに筆者作成)

この表でわかるように、待機児童は都市部に多く地方で少なくなっています。戦前から一貫して女性が働く社会であった地方では、保育需要の増減が少ないため待機児童が生まれにくいのです。他方、女性が家庭を守る社会から、女性が働く社会に急速に変化している都市部では、急増する需要に供給が追いつかないため、待機児童が生まれているようです。

冒頭で述べたような、女性の社会進出に伴う問題を多く抱えている都市部は、共働き社会の「先輩」である地方に学ぶことで、問題を解決することができるかもしれません。

(編集協力:株式会社バーネット)

久保 哲朗 統計ジャーナリスト

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くぼ てつろう / Tetsuro Kubo

1970年、佐賀県生まれ。東京大学文学部卒業。長野県伊那市でシステムエンジニアとして働くかたわら、自らサーバーを立ち上げて、さまざまな統計データを収集・分析。「都道府県別統計とランキングで見る県民性」や年次変化に着目した「年次統計」など、データベースを駆使した統計サイトを複数運営している。代表作に『統計から読み解く 47都道府県ランキング』『47都道府県の偏差値』などがある。

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